[P42-4] 不死化B細胞由来iPS心筋細胞作製における心筋細胞塊形成による分化誘導法の改善
キーワード:iPS, 心筋細胞, 発現遺伝子
【背景】遺伝性心疾患患者のiPS細胞から分化誘導して得られる心筋細胞(iPSC-CM)は、患者心筋に代わり遺伝子変異による細胞機能変化の評価に用いることができる。iPSC-CMは、検体間の違いが大きく、心房・心室筋細胞が混在して作成され、胎児心筋に近い特徴を持つ。【目的】iPSC-CMの分化誘導法を改善すること。【方法】不死化B細胞株に、山中因子を導入してiPS細胞株とした。RPMI培地を用いた接着培養法によりiPSC-CMを分化誘導した。乳酸を含む培地による選別後、iPSC-CMを浮遊系で培養して心筋細胞塊(iPSC-CM sphere)形成し培養した。多点平面微小電極システム(MED64, Alpha MED Scientific)にiPSC-CM sphereを接着し外部電流を測定し、機能評価を行った。iPSC-CMを定量PCR法により発現遺伝子を検討した。【結果】心筋細胞分化開始1-2ヶ月のiPSC-CM sphereでは、接着培養のiPSC-CMと比較して、NKX2.5やTBX5(心初期分化マーカー)の発現が増加した。トロポニンT(心筋細胞マーカー)やミオシン軽鎖2a(心房マーカー)やミオシン軽鎖2v(心室細胞マーカー)の発現が増加した。HCN4(洞結節ペースメーカーマーカー)、HERG(心電位依存性チャネルの一つでありLQT2原因遺伝子)、SCN5A(心ナトリウムチャネル)、SLC8A(Na/Ca Exchanger)の発現が増え、多くは成人心筋並みの発現レベルとなった。MED64による機能評価では、iPSC-CM sphereの電流量が増え波形も改善した。【結論】心筋細胞塊形成により心筋マーカーやチャネルの発現が向上し、機能評価も改善した。iPSC-CMを心疾患の機能評価や薬剤評価に用いる場合、その品質は重要であることから、iPSC-CMの調製法の改良は継続する必要がある。