第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

川崎病・冠動脈・血管

デジタルオーラルII(P44)
川崎病・冠動脈・血管 2

指定討論者:安田 謙二(島根大学医学部)
指定討論者:野村 裕一(鹿児島市立病院)

[P44-5] 川崎病巨大冠動脈瘤1症例における冠動脈病変の画像モダリティ間の比較

吉川 靖, 澤田 まどか, 名和 智裕, 高室 基樹 (北海道立子ども総合医療・療育センター)

キーワード:川崎病, 巨大冠動脈瘤, モダリティ

[はじめに]川崎病冠動脈病変の評価法として心臓超音波検査(UCG),心臓カテーテル検査(Cath),造影CT(eCT),CMRIがある.今回,川崎病巨大冠動脈瘤1症例に対して各モダリティの比較検討を行った.[症例]1歳4ヶ月男児.[現病歴]1歳3ヶ月時に川崎病を発症.第2病日以降でIVIG2回とIVMPを行い解熱したが,第10病日に再発熱.第12病日にIVIG3回目を施行.第15病日に冠動脈瘤を認め抗凝固療法を開始.第17病日にIVIG4回目,第18病日にIFXを投与し解熱.第42病日以降でeCT,Cath,CMRIで冠動脈瘤を評価した.Cathで巨大瘤2個(#1,#6),中等瘤2個(#3,#11),小瘤(#2,#4)の合計6個の冠動脈瘤を認めた.[方法]1)評価精度:各モダリティで瘤描出の可否,瘤入口部・出口部の描出の可否を評価した.2)所要時間,3)利点・欠点について検討した.[結果]1)評価精度:eCT,Cathでは6個全ての瘤が確認できたが,eCTでは#3,#4の入口部・出口部が確認できなかった.UCGでは#4の瘤が確認できず,#2,#3の瘤の入口部・出口部が確認できなかった.CMRIでは#2の瘤が確認できず,#1,#3,#4,#6の瘤の入口部・出口部の確認ができなかった.2)所要時間:eCT<CMRI≒UCG<Cath.3)利点・欠点:Cathは画像評価に最も優れるが,侵襲的で被曝も多い.eCTはCathの次に画像評価に優れるが,被曝が多い.CMRIは被曝がないが,評価精度はCathとeCTには劣る.UCGは繰り返し施行可能である.[考察]今回瘤自体の描出ができなかったのはUCGの#4とCMRIの#2であった.UCGは末梢病変を描出しにくく,CMRIは心拍動の大きい部位での描出が難しいと考えられる.冠動脈描出のgold standardはCathであり,繰り返し行える評価法の第一選択はUCGと考えるが,eCTとCMRIにもそれぞれに利点・欠点があり,適宜補完するためのモダリティとして検討されるべきである.[結語]川崎病巨大冠動脈瘤のUCG,Cath,eCT,CMRIの画像所見を比較検討した.各モダリティの特性を生かす事で,被曝量を抑えつつ十分な観察を行なうことができる.