[P47-3] 無脾症の発熱に対する感染症対策 ー厳密な管理による中間報告ー
キーワード:無脾症, 発熱, 抗菌薬
【背景】無脾症候群患者(以下無脾症)では主に莢膜を有する細菌感染による致死的敗血症の危険性が高いことが知られているが、現在日本では無脾症の発熱に対する明確なガイドラインはなく、欧米での脾摘後患者のガイドラインなどを参照に各施設でそれぞれ対応されているのが実情である。当院では無脾症は全員抗菌薬の予防内服をした上で、発熱の際は原則全例入院し抗菌薬の静脈注射による治療を行ってきた。当院におけるその管理を評価し提示する。【目的】当院における発熱した無脾症の管理の効果、合併症を明らかにする【方法】2018年4月1日から2021年1月31日まで当院に入院した無脾症5人の発熱時の対応を後方視的に評価した。【結果】入院頻度は0.63回/月(0.19-1.5 中央値0.94)、死亡例は認めず、血液培養陽性例は侵襲性肺炎球菌感染症の一件のみであった。全症例で経過中咽頭培養から耐性菌の出現を認めた。一例の菌血症症例はエリスロマイシンによる予防内服で、中耳炎を合併していた。【考察】一件の菌血症症例以外は上気道感染による発熱であったと考えられる。また耐性菌の出現は予防内服や抗菌薬静注投与などによって誘導された可能性がある。エリスロマイシンによる予防内服と中耳炎合併は菌血症のリスクファクターである可能性がある。【結論】当院の管理で無脾症の菌血症による死亡例は認めなかったが、過剰治療が懸念される症例も認めた。今後は無脾症の発熱時対応について適切な治療強度を検討していくためにも、症例を蓄積し合併症や年齢などのリスクファクターを検討していく必要がある。また今後の課題として何歳まで現在の管理を行うべきか、経口予防内服の効果をどう判定するか検討していく必要がある。