[P5-1] QT延長症候群を背景として心室細動を発症し、s-ICD植え込みを要したNAA10-related syndromeの1例
キーワード:NAA10, QT延長症候群, s-ICD
【緒言】NAA10は,タンパク質のN末端アセチル化に関わる重要な酵素の1つである.NAA10-related syndromeは,X染色体上のNAA10遺伝子異常により,精神発達遅滞,低緊張,側弯,成長障害,様々な外表奇形等の表現型を示し,重症度も様々である.心疾患に関しては,肥大型心筋症(HCM)を合併する可能性が知られているが,一部の変異ではQT延長症候群(LQTS)を伴うことがある.【症例】7歳男児.HCM,自閉症,軽度発達遅滞,歩容異常を指摘され,6歳時に遺伝子解析でNAA10の新規変異(NM_003491.3:c.278A>G:p.Gln93Arg)が同定された.入院日当日,外出中に転倒し,全身間代性痙攣を認めた.救急隊到着時,心室細動(VF)波形のため除細動を施行し,心停止から10分前後で自己心拍再開した.前医搬送時,昇圧剤は要さずに循環動態は維持できていたが,意識障害が遷延したため,挿管管理の上,当院に搬送された.平温管理を行い入院4日目に抜管した.頭部MRIで虚血性変化は認めず,神経学的後遺症は残さずに回復した.HCMについては,心筋壁肥厚は認めるものの左室流出路狭窄はなく,心臓MRIの遅延造影画像でも障害心筋は明らかではなかった.一方でQTcは変動があるものの450-550 msと延長しており,LQTSを背景としてVFを発症した可能性が高いと考えられた.β遮断薬の内服を開始した上で,他院にてs-ICDの植え込みを行った.【考察】NAA10-related syndromeの診療においては,LQTSを合併する可能性を認識し,不整脈の発症に注意することが必要である.近年,不整脈発生に関連するNAA10変異部位の同定が進んでいるが,さらなる情報を蓄積し,重症不整脈発症のリスク層別化を目指すことが重要である.