[P6-1] 両大血管右室起始、肺動脈狭窄に動脈管早期収縮を合併した胎児診断症例
キーワード:動脈管早期収縮, 胎児, 先天性心疾患
【背景】低肺血流に動脈管早期収縮(PCDA)を合併した胎児診断報告は少ない。【症例】両大血管右室起始(DORV)、肺動脈狭窄(PS)にPCDAを合併した胎児例。母体は45歳、3経妊0経産、体外受精・胚移植妊娠。非ステロイド系抗炎症剤の投与歴はなし。21トリソミー、十二指腸閉鎖、先天性心疾患の疑いで妊娠25週1日に当院紹介となった。胎児心臓超音波検査でDORV, subaortic VSD, PSと診断し、順行性の肺動脈血流および動脈管血流を確認した。妊娠31週5日、ドップラー法による末梢肺動脈および動脈管の順行性血流を確認できず、両側肺静脈血流も極わずかであった。妊娠33週1日、極めて少ない肺動脈の順行性血流を確認できたが、肺静脈血流も極めて少なく、再度動脈管形態および血流を確認できないことからPCDAと診断した。産科・NICU・心臓血管外科と情報を共有し、右室流出路の形態を含めて、生後の肺動脈循環に対する治療の選択肢を議論した。経過中、静脈管血流の低下および逆流や胎児水腫は認めなかった。妊娠35週2日、胎児心拍低下と胎児貧血が懸念されたため緊急帝王切開で出生した。出生体重2,427g、アプガースコア8/9点、経皮的動脈血酸素飽和度は90%であった。経胸壁心臓超音波で、DORV, subaortic VSD、肺高血圧症と診断、動脈管は閉鎖し、肺動脈の順行性血流は保たれていた。【考察】本症例における肺動脈血流欠如の機序は、PCDAによる右室高負荷増大とVSDによる機能的肺動脈閉鎖と考えられた。PSを伴う胎児血行動態におけるPCDAは、ドップラー法による生後の肺循環予測が困難であり、形態評価による肺血流予測の重要性が示唆された。胎内の血行動態の変化を形態および血流により継続的に評価することは、適切な周産期対応の重要な情報となると考えられた。【結語】低肺血流に合併したPCDAでは、非典型的な経過となるため、継続的な形態および血流の観察と慎重な周産期対応の決定が重要である。