[P6-3] Intact ventricular septumの所見からIAAを見落とし出生前診断し得なかったBerry症候群の1例
キーワード:Berry症候群, 出生前診断, 胎児超音波検査
【はじめに】Berry症候群は1982年にBerryらにより報告された、Aortopulmonary window(APW)、IAA、Ao origin of the right pulmonary artery(AORPA)、Intact ventricular septum(IVS)を特徴とする稀な疾患である。今回胎児超音波検査でIVSの所見からIAAの可能性を否定し、出生前診断し得なかったBerry症候群の1例を経験した。【症例】在胎30週に口唇裂を指摘され当院分娩管理入院となり、スクリーニングとして胎児超音波検査紹介となった。心室位はd-loop、大血管は右室から起始している前方血管は下行大動脈へとつながり、左室から起始している後方血管は細く左右に分岐していた。血管走行は流出路描出は困難であったが大血管短軸関係はparallelであったため左前Ao 右後PAのL-parallelと診断、最終的にはS,D,L TGA(I)+PSと胎児診断された。在胎36週6日、体重2,439g、経腟分娩にて出生となった。出生後の超音波検査でAPW, AORPA, IAA, IVSを認めBerry症候群と診断した。心疾患以外に口唇口蓋裂、外性器異常、多指症・多趾症を認め染色体検査で13trisomyが診断された。【考察】Berry症候群はAPWとAORPAの存在により大動脈峡部への血流低下を来すflow theoryからIAAを来すとされる。出生前診断を誤った原因として、(1)前方血管であるPAからPDAを介したD.Aoまでの形態をArchと判断、(2)後方血管であるAoはRPAが起始した後Archを形成せずに走行しており、これが左右分岐したPAと判断、(3)左前Ao右後PAの大血管転位関係でありうると判断、(4)通常IAAの多くはVSDを有しており、IVSの所見からIAAの可能性は低いという判断、があげられた。胎児超音波検査は限られた描出画像から血行動態を推測し診断する側面も持ち合わせており、誤った血行動態評価では描出画像の解釈が大きく異なる恐れがある。出生前診断の精度向上には様々な角度からアプローチ可能な胎児超音波検査の利点を十分に生かしたスクリーニングが重要となる。