[I-P1-7-05] フォンタン術後患者における心不全入院の実際~フォンタンレジストリからの報告~
キーワード:心不全, フォンタン, 成人先天性心疾患
【背景】フォンタン手術後の患者では様々な合併症による入院を経験する。その中でも、心不全は入院原因の一つであるが、その治療内容や経過の実際は明らかとなっていない。【目的】当院でのフォンタン手術後患者の心不全入院の臨床像、治療の実際とその経過について検討する。【方法】当院で2018年から2021年の3年間に当院に入院し治療が行われた心不全入院8例を対象に、その臨床像、治療を後方視的に検討した。【結果】診断は三尖弁閉鎖3 例、両大血管右室起始症1例、房室錯位2例、共通房室弁2 例の計8例で、左室体心室5例、非左心室3例であった。入院時年齢は平均26.5歳(5.4-34.1歳)でフォンタン手術後26.4±3.87年であった。入院契機は4例(50%)が管理不良で、残る4例は感染、貧血、ペースメーカー不全、房室弁逆流増悪であった。入院時、腹水を6例(75%)、胸水を4例(50%)、下腿浮腫を5例(63%)で認めた。治療として、安静と食事療法(塩分6g/日)のみで改善を得られた例はなく、酸素投与、利尿剤投与を各々延べ6例(75%)、6例(75%)で施行され、強心薬使用は要しなかった。3例(38%)で胸腹水に対しドレナージ、2例で外科的介入を要した。2治療併用が3例(38%)、残る6例(75%)で多種治療を要した。入院期間は平均43.6日(9-78日)で、治療前後(平均値)で体重(kg)は43.9から39.6(p=0.012)と低下し、体うっ血は改善を認めた。今回の初回退院後、平均2.5±0.8年の経過観察で3例(38%)が再入院したが、死亡例はなかった。再入院を要した3例は再入院しなかった5例と比べ、入院時に胸腹水と下腿浮腫を認めた。入院直前カテーテルでCVP、CIが高く、Rs、SaO2は低かった。また、入院時血清蛋白値と血清アルブミン値が低く、血小板数が高く、HDLコレステロールが低かった。【結論】フォンタン手術後患者の心不全入院の多くは体液貯留を主体とする右心不全の症状を呈し、その一部は腹水再貯留で入院を繰り返した。