[I-OR04-05] ヒス束内縦解離が交代性脚ブロックの機序と考えられた神経筋疾患の2成人例について
キーワード:交代性脚ブロック, ヒス束内縦解離, 臨床心電学
【緒言】完全右脚ブロック(CRBBB)または左脚ブロック(CLBBB)波形が一連の洞調律心電図記録内で交代性に出現するものを狭義の交代性脚ブロック(ABBB)とされるが,一旦ブロックされた脚が数拍後に伝導性を回復して他側の脚ブロックを示すことはあり得ない.今回我々は,神経筋疾患の2成人例に認めた狭義のABBBの機序について,臨床心電学的にヒス束内縦解離による解析で説明可能と考えられたので報告する.便宜上,ヒス束内で縦解離して右脚に向かう線維束を右脚束,同様に左脚に向かう線維束を左脚束とした.【症例1】Kearns-Sayre症候群の27歳男性.19歳時の心電図で洞調律,左軸偏位,CRBBB型(A)を示し,その数十秒後にCLBBB型(B)を示すABBBを認めた.肢誘導と胸部誘導の同時記録がないため,I誘導波形を観察すると,PPが0.87秒から0.83秒に短縮するとS波がないBからS波を有するAに交代した.以上から,Aは不応期が相対的に短い左脚束を伝導し,右脚へは左脚束から横伝導するためCRBBB型になり,Bは逆に右脚束から左脚に横伝導するためCLBBB型になると考えられた(日本不整脈心電学会誌『心電図』vol.43, No.3,印刷中).【症例2】筋強直性ジストロフィーの56歳男性.常時洞調律のCLBBB型であったが,今回Holter心電図上でPP0.98秒,CLBBB型(A)からPP0.68秒に短縮すると突然CRBBB型(B)に変化,数拍後再び突然,PPは同程度ながらAに変化するABBBを認めた.ABBBの際の12誘導心電図が得られていないものの,本症例もヒス束内縦解離によって右脚束から横伝導で左脚に伝導するAから,頻脈依存性に右脚束ブロックが生じ,左脚束から横伝導で右脚に伝導するBに変化したものと考えられた.さらに,右脚束の過常期伝導により再度BからAに変化したものと思われた.【結語】難解な不整脈や脚ブロック,軸偏位等の機序を解釈する上で,ヒス束内縦解離を想定した解析は極めて有用である.