[II-OR23-06] Fontan循環におけるPulmonary Vasodilatorは用いる症例を選ばなければ有害となる
キーワード:Fontan, Pulmonary vasodilator, cardiovascular magnetic resonance
【背景と目的】Pulmonary vasodilator(PVD)はFontan循環への好影響が期待される.しかしPVDが体肺短絡血流(SPCF)を増加させうる事象(57thJSPCCS),PVD中止に伴いSPCF減少・CVP/LAp低下から血行動態が改善した2症例(41th JSPECH)を経験したことから,当施設ではFontan術後SPCF過多かつ高CVP/LAp症例ではPVDを中止し,逆にSPCF少量でTranspulmonary Gradientが高い症例にはPVDを導入する方針を採用している.この方針の適否を検証した.【対象と方法】2017年6月から2023年1月に当院でCMRと心カテを36時間以内に施行されたFontan循環417例513件のうち上記方針にて介入した6例12件を対象とした.PVD中止前後の4例8件(D群:7.8→8.9歳)とPVD開始前後の2例4件(S群:13.0→15.9歳)で介入前後の血行動態を比較した.【結果】D群ではPVD中止後,QsIは不変(2.56→2.58L/min/m2),QpI(4.02→3.14L/min/m2)・SPCF1/2は著しく減少し(1.49→0.53/1.56→0.51L/min/m2),Qp/Qsは低下した(1.64→1.24).これに伴いIVCp(12.3→10.3mmHg), PAWPも低下(Rt7→4.5/Lt8.3→4.5mmHg)した.S群ではPVD開始後QsI,QpI,SPCF1/2は不変だがIVCpはD群同様低下(12.5→11.5mmHg)し,PAWPは不変であった.なお,D群では心室容積も減少した(201→171%ofNomral)がEFは変わらなかった.S群ではいずれも不変であった.【考察】Fontan循環へのPVDの効果は数多く検証されている.PAP低減,PAWP上昇やPeak VO2増大傾向は概ね正しそうだが有効との結論には至れていない.症例毎に異なる反応が要因と推測され,提示の如くその反応とはSPCFの多寡に拠るのではないか.CMRでのSPCF定量はPVD内服前にその功罪を層別化し,かつ開始後に有害性をモニタリングすることができる重要なツールと言える.【結論】両群ともCVP低下という好ましい効果が得られ,D群では容量負荷の低減も得られた.CMRを用いた当施設の介入方針は,腹部臓器への負担を軽減し長期予後に寄与できる可能性がある.