[II-P05-4-08] 気管腕頭動脈瘻ハイリスク例に対する胸骨上アプローチによる予防的腕頭動脈離断術
キーワード:気管腕頭動脈瘻, 腕頭動脈離断術, 重症心身障害児
【背景】気管腕頭動脈瘻(TIF)は喉頭気管分離術および気管切開術後の致死的合併症である。発生頻度は一般的に1%未満と稀だが、重症心身障害児においては4.4-12.7%と少なくなく,ハイリスク症例では予防的腕頭動脈離断術(PIAT)が考慮される。【目的】当科では胸骨切開を要さない胸骨上アプローチに加えて術前頭頸部3D-CT評価と術中腕頭動脈(IA)断端圧測定から血行再建を回避するPIATを施行してきたのでその早期成績を評価した.【対象】2020年10月~2022年12月までTIFハイリスク症例と診断されPIATを施行した5例。年齢12(9-18)歳、男:女=1:4、体重25.3(18.4-29.5)kg、全例胃瘻造設後の重症心身障害児であり,喉頭気管分離術後4例、気管切開術後1例。【方法】ハイリスク症例の診断は、気管切開孔からの微小出血(先行出血)、短頚、側弯、CT所見から胸骨裏面~椎体前面間<2cm、IAによる気管前面の圧排、気切カニューレ先端とIA気管交叉部の高さが一致、同部位で気管内視鏡で異常拍動や気管粘膜びらん、潰瘍、不良肉芽の有無から総合的に判断した。全例で術前頭頸部3D-CT検査を施行し、頭蓋内動脈の破格が無いことを確認した。手術においては全例で脳内局所酸素飽和度(rSO2)モニタリングを施行し、IAを離断する前にIA末梢断端圧測定を行った。IA離断においては右総頚動脈(CCA)と右鎖骨下動脈(SCA)の分岐部を温存した。【結果】胸骨上の小切開(3~4cm)で全例PIAT可能であり、rSO2低下は認めなかった。全身平均血圧60(55-65)mmHgに対してIA断端平均血圧52(49-56)mmHgであり、血行再建不要と判断できた。全例で神経学的合併症なく、術後造影CTで脳梗塞も認めなかった。右SCA→CCA→右中大脳動脈の描出を確認した。術後在院日数12(9-14)日であった。【結語】当科における胸骨上アプローチによる予防的腕頭動脈離断術は,TIFハイリスク症例における重症心身障害児に対して低侵襲かつ安全な治療となりうると考える。