[II-P07-1-06] 前腕からの静脈採血後に指摘された上腕仮性動脈瘤に対して血管形成術を施行した乳児例
キーワード:静脈採血, 穿刺合併症, 仮性動脈瘤
【背景】年少児でも静脈採血部位として前腕の皮静脈が用いられことがあるが、上肢肘窩近傍の血管や神経の走行を理解していないと時に重篤な合併症を起こし得る。【症例】症例は3ヶ月の女児。自己炎症性疾患や結合組織疾患の家族歴なし。在胎38週3日、3062gで出生し、特に異常の指摘なく経過。生後2ヶ月時に近医小児科で血液型検査を希望し、右前腕皮静脈より採血施行。その後同部位に皮下血腫を認めていたが、色調は自然に改善。しかし、約1ヶ月後に採血部位(右肘内側)の腫脹に気付き、生後3ヶ月時に近医を再診し、精査目的に当院紹介。右肘内側に約2cm大の拍動性腫瘤を触知し、血管エコーで上腕動脈から連続して描出され内部に流入するto and froパターンの血流波形を認め、造影CTで上腕動脈と交通する増強腫瘤陰影を認め、仮性動脈瘤と診断。心臓血管外科と協議のうえまずは圧迫止血を試みる方針とし、モニター下に鎮静(デクスメデトミジン+チアミラール)を行い、阻血に注意しながら計7時間圧迫(用手4時間+圧迫止血用絆創膏3時間)し、瘤内の血栓化を確認。一旦退院としたが、3日後の外来再診時に瘤内への血流再開を認め、同様の用手圧迫では止血できず、全身麻酔下に動脈瘤切除・血管形成術を施行。動脈瘤を切開したところ孔は瘤内から観察可能で、孔を縫合止血。術後の右手末梢の動きや色調に問題なく、その後の外来経過も良好である。【考察】上腕動脈瘤は稀であり、その成因は鈍的外傷や医原性が多いとされている。本症例が動脈瘤を形成しやすい基礎疾患を有していたかどうかの検索は十分にできていないが、経過からは採血手技が動脈瘤形成に影響した可能性が高いと考える。年少児の採血で前腕の皮静脈を盲目的に穿刺することが起こり得るが、尺側皮静脈に近接する上腕動脈や、前腕を走行する正中神経などの解剖を理解して手技を行う必要がある。