[II-P08-3-06] フォンタン術後に内視鏡検査で胃食道静脈瘤が確認された3例
キーワード:フォンタン手術, 胃食道静脈瘤, 上部消化管内視鏡
【背景】フォンタン術後遠隔期の臓器障害としてうっ血肝およびそれに伴う肝硬変,肝細胞癌の発生が知られている.門脈圧亢進による胃食道静脈瘤も起こりうる病態だが,フォンタン術後の胃食道静脈瘤についての報告は少なく,発生頻度や時期については詳細に検討がなされていない.当院で経験したフォンタン手術後の胃食道静脈瘤の3症例について報告する.【症例】15歳男児.Heterotaxy,単心室,一側房室弁閉鎖,肺動脈閉鎖.5歳時にフォンタン手術を受けた.外来経過中に貧血を繰り返しており輸血のために入院した既往がある.貧血のスクリーニングで実施した上部消化管内視鏡検査で食道上部から下部にかけて4条の静脈瘤があり,胃にも静脈瘤を認めた.16歳男児.単心室症.2歳時にフォンタン手術を,12歳時に大動脈弁置換術を受けた.自宅で少量の吐血,黒色便があり受診し,貧血を認めた.上部消化管内視鏡検査で食道中部に静脈瘤が確認され,食道下部に出血源とみられるびらんを認めた.内服加療後に内視鏡検査を再検し,びらんは治癒したが静脈瘤は残存している.5歳女児.無脾症,両大血管右室起始症,僧帽弁閉鎖症,総肺静脈還流異常症.1歳4か月時に両側両方向グレン手術を受け,5歳時にフォンタン手術を受けた.フォンタン手術後の退院直前に黒色便,貧血,吐血があり,上部消化管内視鏡検査で吐血の原因と推測された十二指腸潰瘍からの出血と食道に軽度の静脈瘤を認めた.【考察】フォンタン術後は中心静脈圧上昇による胃食道静脈瘤が発生し,少数であるが静脈瘤破裂の報告もある.これまでは術後数年から数十年経過してからの発症の報告が多く,当院でも同様の症例があった一方で,術直後にすでに軽度の静脈瘤を認めた例も存在した.小児患者では内視鏡検査の機会も少なく見逃されやすい合併症であるため,術後早期から胃食道静脈瘤が起こりうることを念頭に置いて診療に当たる必要があると考える.