[II-V-02] 孤立性左肺動脈を合併したファロー四徴症・肺動脈弁欠損に対する外科治療の要点
キーワード:ファロー四徴症, 肺動脈弁欠損, 孤立性左肺動脈
【背景】肺動脈欠損(APV)はファロー四徴症(TOF)の5%前後に合併するとされるが,これに孤立性左肺動脈(iLPA)を伴うことは極めて稀で,文献的にもごく少数の報告を認めるのみである.我々が経験したTOF/APV/iLPA症例の手術動画を供覧し,外科治療の注意点と術式の工夫について提示する.【症例】4ヶ月女児(体重 5.6kg).診断はTOF/APV/iLPA/右側大動脈弓. 肺動脈弁は弁輪の一部に痕跡的な弁尖を認めるのみ. 著明に拡大した右肺動脈(径24mm, Z+8.9)による右主気管支の圧排に対し生後より非侵襲的陽圧換気補助を要した.左肺動脈(径8mm, Z+2)は腕頭動脈より起始した動脈管で血流が維持,右肺動脈との最短距離は7mm程度であった.肺動脈弁輪は通常の右肺動脈分岐部に位置し右室漏斗部がこの高さまで延長していた.【手術】胸骨正中切開,人工心肺補助下に①右肺動脈縫縮 ②左肺動脈移植 ③VSD閉鎖 ④右室流出路再建(ePTFE3弁付き導管)を施行した.各操作における留意点は以下の通り.①前壁は水平線から時計回りに傾けた笹の葉状の切除で上葉枝まで縫縮,後壁は半時計回りに傾けた切除として中下葉枝まで縫縮しつつ左肺動脈の移植部位を確保.②右肺動脈起始部の左端やや背側寄りに楕円形の開口部を作製,動脈管組織を切除した左肺動脈断端を直接吻合.④肺動脈弁輪のわずかに遠位で右肺動脈を切離,これに追加切開を加えてePTFE導管を吻合.肺動脈弁は縫合閉鎖したが,漏斗部の膨隆が導管を背側から圧排する懸念があり,右室切開部より漏斗部内腔の縫縮を追加して干渉を回避.【考察】TOF/APV/iLPAの外科治療においては,右肺動脈縫縮のデザイン・左肺動脈移植部位の設定・膨隆した右室漏斗部と右室-肺動脈導管の干渉回避 の三点が要点と考えられた.