[III-CSY08-05] 冠動脈瘤を伴う川崎病患者のレジストリ研究; KIDCAR
キーワード:川崎病性冠動脈瘤, 冠動脈イベント, ワルファリン
【背景】冠動脈瘤を合併した川崎病患者の冠動脈イベント発生については,巨大瘤以外の関連因子は明らかでなく,適切な管理法も確立していない.これらを解明するためには,多数の冠動脈瘤症例を前方視的に調査する必要がある.【方法】本研究は,2015年以降に発症した川崎病患者のうち中等瘤あるいは巨大瘤を合併した症例を対象とした多機関共同レジストリ研究である.対象患者について冠動脈イベント(血栓,狭窄,閉塞)発生の推移を年1回追跡し,関連因子について調査した。【結果】2023年3月時点で53施設より208例が登録されており,このうち,2021年2月までに登録された179症例を解析対象とした.追跡期間は29-1871日(中央値501日),発症時年齢は中央値2.2歳、男性が137例(77%),不全型が47例(26%),巨大瘤が36例(20%)であった.冠動脈イベントは13例(7%)で発生し,うち8例(62%)が発症1年以内,全例が発症2年以内に生じていた.このうち12例で抗血小板薬とワルファリンの併用療法が行われていた.巨大瘤は中等瘤に比較し有意に瘤の数が多く(2.8 vs. 1.7,p<0.001),ワルファリン使用例が多く(86% vs. 43%,p<0.001),冠動脈イベントを生じやすい(28% vs. 2%,p<0.001)結果となった.Cox比例ハザード解析では,巨大瘤(ハザード比17.0,95%信頼区間4.7-61.9),3個以上の冠動脈瘤(同23.3,3.0-182.1),数珠状瘤(同15.9,3.5-71.9)が有意な関連因子であった.【考察】冠動脈イベントは発症2年以内に生じやすく,巨大瘤のみならず多発瘤や数珠状瘤についても注意が必要である.抗血小板薬とワルファリン併用による抗血栓療法は完全ではなく,本研究の症例蓄積による,より良い管理方法の開発が望まれる.