第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

委員会企画シンポジウム

委員会企画シンポジウム8(III-CSY08)
先課題研究委員会年次報告セッション

2023年7月8日(土) 14:00 〜 15:30 第1会場 (G3)

座長:新居 正基(静岡県立こども病院循環器科), 座長:犬塚 亮(東京大学小児科), コメンテーター:武田 充人(北海道大学大学院医学研究院小児科), 澤田 博文(三重大学大学院医学系研究科小児科学), 永井 礼子(北海道大学病院小児科)

[III-CSY08-05] 冠動脈瘤を伴う川崎病患者のレジストリ研究; KIDCAR

小山 裕太郎1, 三浦 大1, 小林 徹2, 鉾碕 竜範3, 菅沼 栄介4, 沼野 藤人5, 古野 憲司6, 塩野 淳子7, 布施 茂登8, 深澤 隆治9, 三谷 義英10 (1.東京都立小児総合医療センター 循環器科, 2.国立成育医療研究センター 臨床研究センター, 3.横浜市立大学附属病院 小児循環器科, 4.埼玉県立小児医療センター 感染免疫・アレルギー科, 5.新潟大学医歯学総合病院 小児科, 6.福岡市立病院機構 福岡市立こども病院 総合診療科, 7.茨城県立こども病院 小児循環器科, 8.NTT東日本札幌病院 臨床検査科, 9.日本医科大学付属病院 小児科, 10.三重大学医学部附属病院 小児科)

キーワード:川崎病性冠動脈瘤, 冠動脈イベント, ワルファリン

【背景】冠動脈瘤を合併した川崎病患者の冠動脈イベント発生については,巨大瘤以外の関連因子は明らかでなく,適切な管理法も確立していない.これらを解明するためには,多数の冠動脈瘤症例を前方視的に調査する必要がある.【方法】本研究は,2015年以降に発症した川崎病患者のうち中等瘤あるいは巨大瘤を合併した症例を対象とした多機関共同レジストリ研究である.対象患者について冠動脈イベント(血栓,狭窄,閉塞)発生の推移を年1回追跡し,関連因子について調査した。【結果】2023年3月時点で53施設より208例が登録されており,このうち,2021年2月までに登録された179症例を解析対象とした.追跡期間は29-1871日(中央値501日),発症時年齢は中央値2.2歳、男性が137例(77%),不全型が47例(26%),巨大瘤が36例(20%)であった.冠動脈イベントは13例(7%)で発生し,うち8例(62%)が発症1年以内,全例が発症2年以内に生じていた.このうち12例で抗血小板薬とワルファリンの併用療法が行われていた.巨大瘤は中等瘤に比較し有意に瘤の数が多く(2.8 vs. 1.7,p<0.001),ワルファリン使用例が多く(86% vs. 43%,p<0.001),冠動脈イベントを生じやすい(28% vs. 2%,p<0.001)結果となった.Cox比例ハザード解析では,巨大瘤(ハザード比17.0,95%信頼区間4.7-61.9),3個以上の冠動脈瘤(同23.3,3.0-182.1),数珠状瘤(同15.9,3.5-71.9)が有意な関連因子であった.【考察】冠動脈イベントは発症2年以内に生じやすく,巨大瘤のみならず多発瘤や数珠状瘤についても注意が必要である.抗血小板薬とワルファリン併用による抗血栓療法は完全ではなく,本研究の症例蓄積による,より良い管理方法の開発が望まれる.