[III-P09-4-03] 家族が治療を希望しない胎児先天性心疾患症例に対する当院での対応を振り返る
キーワード:胎児診断, 先天性心疾患, 治療拒否
【背景】先天性心疾患における胎児診断のメリットには、児の予後を改善させる他に、カウンセリングに不可欠な情報を家族へ提供することが挙げられる。その中で家族が児の治療を希望しない事例がある。【目的】家族が治療を希望しなかった胎児先天性心疾患症例に対する当院での対応を検討すること。【方法】1993年の開院以来、染色体異常などの心外疾患の合併無く先天性心疾患を単独で胎児診断された症例の中で、家族が出生後の治療を希望しなかった4例について、診療録から後方視的に検討した。【結果】4症例の診断時期は1999-2007年で、在胎28-37週に胎児診断された。心疾患はHLHS 2例(狭小卵円孔1例)、左側相同・DORV・洞性徐脈、Ebstein病・PSVTで胎児水腫を来した症例は無かった。37週に診断された1例を除いて4-6回の胎児心エコーと小児循環器医および新生児科医からICが行われた。いずれも小児循環器科医から予後不良による緩和医療の提示はなかったが、手術あるいは一切の治療を希望されなかった。分娩は全例児適応での帝王切開は行わないことを希望され、2例が近医総合病院への転医を希望された。出生後、2例は家族が手術治療を希望されるようになり、1例はDuctal shockを来した時点で治療を希望、残りの1例は一切の治療を希望されず生後3日目に家族に見守られながら永眠された。治療を行った3例はいずれも生存退院し、2例はFontan手術を終えて生存している。【考察】いずれもFontan手術適応となる重症心疾患で、不整脈等の予後不良因子も存在した。ICにおいては予後について各疾患で標準的と考えられる説明がなされており、手術治療の他にも生後の管理や分娩方法について相談されたが、中には家族の意向と異なる治療の説明がなされたケースもあり、多職種での関りで家族の意向を把握し、正確な情報提供と様々な家族の意向を受け入れられる体制づくりが重要と考えられた。