第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

心不全・心移植に対する薬物療法

ポスター発表(III-P10-1)
心不全・心移植に対する薬物療法

2023年7月8日(土) 10:30 〜 11:20 ポスター会場 (ポスター展示会場)

座長:長友 雄作(九州大学病院 小児科)

[III-P10-1-01] 新生児期に急性心不全を呈した冠動脈低形成症例に対するIvabradineの有効性の検討

馬場 恵史1, 堀口 祥1, 塚田 正範1, 小澤 淳一1, 阿部 忠朗1, 沼野 藤人1, 長谷川 聡2, 杉本 愛3, 渡邉 マヤ3, 白石 修一3, 齋藤 昭彦1 (1.新潟大学医歯学総合病院小児科, 2.新潟県立新発田病院小児科, 3.新潟大学医歯学総合病院心臓血管外科)

キーワード:冠動脈低形成, Ivabradine, 急性心不全

【背景】冠動脈低形成は先天的に一枝以上の分枝が低形成になる疾患で管腔内の径が狭小化する。病態は頻脈時に十分な冠灌流が維持できず心筋虚血が生じ、心筋梗塞に至ることがある。初回の虚血で突然死することもあり若年者の突然死を来す疾患の一つである。【症例】日齢13女児【経過】日齢12に嘔吐と活気不良が出現した。日齢13に血性嘔吐が出現し前医に救急搬送。血液ガス検査でpH 6.759,pCO2 111 mmHg,HCO3- 15.7 mEq/L,胸部レントゲンで肺うっ血像を心エコー検査で左室駆出率が20%であった。急性心不全による混合性アシドーシスと判断、当院搬送後に集中治療を開始した。鎮静下で左室駆出率は45%に上昇したが、鎮静解除後に啼泣を契機に心拍数が220 /分に上昇すると、血圧低下と徐脈が出現し心肺蘇生を行った。蘇生後は左室駆出率が20%に低下し、AnteriorとLateral領域のstrain低下を認めた。大動脈造影で左冠動脈が全体的に低形成で(#5 0.81 mm -2.68 SD、#6 0.59 mm -3.46 SD、#11 0.60mm -2.47 SD)、左冠動脈低形成と診断した。頻脈時に左冠動脈領域の虚血が生じ、左室の収縮が極度に低下し急性心不全を発症したと考えた。心不全治療としてCarvedirolを導入したが、頻脈時に収縮低下を来たし管理に難渋した。頻脈予防としてIvabradineを追加すると、安静時と啼泣時の心拍数を低下させ虚血の予防を行うことができた。【考察】冠動脈低形成症例に対する有効な治療法は文献的も存在せず、運動制限や抗血小板薬による心筋虚血の予防に徹している報告が大半である。しかし経過観察中の若年者の突然死の報告は散見され頻脈の予防は難渋することが多い。過去にIvabradine使用の報告はないが啼泣から頻脈に至りやすい新生児や乳児の心拍数抑制に有効と考えられた。【結語】頻脈時に左室領域の虚血により収縮低下を来す左冠動脈低形成症例に対し、Ivabradineによる心拍数抑制は心筋虚血の予防に有効であった。