[III-P12-1-06] 血管炎を背景とした真性上腕動脈瘤の乳児症例
キーワード:上腕動脈瘤, 乳児, 血管炎
【背景】小児において上腕動脈瘤は稀な末梢性動脈瘤である。原因として特発性、外傷性、血管炎、結合組織病などがあり、中でも血管ベーチェットが原因の真性上腕動脈瘤の報告は限られている。【症例】1歳5か月の女児。左上腕の腫脹と疼痛をみとめ当院を受診。左上腕の疼痛を伴う拍動性の腫瘤を認めた。左上肢麻痺はなく、口腔内アフタ、外陰部潰瘍、皮膚症状、眼症状もみとめなかった。既往歴や外傷歴はなく、発達・発育は年齢相応であった。父方曾祖と叔父にベーチェット病の家族歴があった。造影CT検査で左上腕に35*32mmの動脈瘤をみとめた。血液検査では慢性炎症の所見はみとめず、また感染性動脈瘤は否定的であった。HLA-A26陽性であった。上腕動脈瘤破裂や神経圧迫のリスクを考慮し、入院3日後に大伏在静脈をグラフトにして血行再建術を施行した。動脈瘤は壁構造の保たれた真性瘤であり、内部は血栓が充満していた。病理所見は全体的に壁構造が破壊され、軽度の炎症細胞浸潤をみとめ、動脈炎の経過と考えられた。術後はアスピリン内服とシーネ固定を行った。術後10日目の造影CTでグラフト血管の開存を確認してシーネ固定を終了した。術後3ヵ月でアスピリン内服を中止し、術後9ヵ月の造影CT検査で良好なグラフト開存を確認している。【考察】ベーチェット病の家族歴、HLA-A26陽性であることと病理所見で血管炎の所見をみとめたことから、血管ベーチェットによる上腕動脈瘤は鑑別にあがる。本症例は経過とともにベーチェット病の臨床症状が出現する可能性があるため、注意して経過観察をしていく。