第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

川崎病

ポスター発表(III-P12-1)
川崎病3(評価・他疾患)

2023年7月8日(土) 14:00 〜 14:50 ポスター会場 (ポスター展示会場)

座長:星合 美奈子(山梨県立中央病院小児循環器病センター)

[III-P12-1-06] 血管炎を背景とした真性上腕動脈瘤の乳児症例

川田 愛子1,2, 市川 泰広1, 河合 駿1, 合田 真海2, 若宮 卓也1, 中野 裕介1, 渡辺 重朗1, 町田 大輔2 (1.横浜市立大学附属病院, 2.横浜市立大学附属病院 心臓血管外科)

キーワード:上腕動脈瘤, 乳児, 血管炎

【背景】小児において上腕動脈瘤は稀な末梢性動脈瘤である。原因として特発性、外傷性、血管炎、結合組織病などがあり、中でも血管ベーチェットが原因の真性上腕動脈瘤の報告は限られている。【症例】1歳5か月の女児。左上腕の腫脹と疼痛をみとめ当院を受診。左上腕の疼痛を伴う拍動性の腫瘤を認めた。左上肢麻痺はなく、口腔内アフタ、外陰部潰瘍、皮膚症状、眼症状もみとめなかった。既往歴や外傷歴はなく、発達・発育は年齢相応であった。父方曾祖と叔父にベーチェット病の家族歴があった。造影CT検査で左上腕に35*32mmの動脈瘤をみとめた。血液検査では慢性炎症の所見はみとめず、また感染性動脈瘤は否定的であった。HLA-A26陽性であった。上腕動脈瘤破裂や神経圧迫のリスクを考慮し、入院3日後に大伏在静脈をグラフトにして血行再建術を施行した。動脈瘤は壁構造の保たれた真性瘤であり、内部は血栓が充満していた。病理所見は全体的に壁構造が破壊され、軽度の炎症細胞浸潤をみとめ、動脈炎の経過と考えられた。術後はアスピリン内服とシーネ固定を行った。術後10日目の造影CTでグラフト血管の開存を確認してシーネ固定を終了した。術後3ヵ月でアスピリン内服を中止し、術後9ヵ月の造影CT検査で良好なグラフト開存を確認している。【考察】ベーチェット病の家族歴、HLA-A26陽性であることと病理所見で血管炎の所見をみとめたことから、血管ベーチェットによる上腕動脈瘤は鑑別にあがる。本症例は経過とともにベーチェット病の臨床症状が出現する可能性があるため、注意して経過観察をしていく。