[III-P12-1-07] 突然死し、病理解剖で診断した高度冠動脈狭窄を有する高安動脈炎の1例
キーワード:狭心発作, 高安動脈炎, 冠動脈
【背景】高安動脈炎は大型動脈炎に分類され、大動脈からの主要分岐動脈に炎症に起因する狭窄を生じる。症状・血液検査所見は特異性に乏しく、発熱・炎症反応の上昇を呈さない非典型例の診断は容易でない。突然死し、病理解剖で診断された、冠動脈起始部に高度狭窄を認めた高安動脈炎の症例を報告する。【症例】生後3か月で川崎病に罹患、アスピリンとIVIG大量で解熱、冠動脈病変を認めず、5年後にフォローを終了。13歳時、数か月来の食思不振、体重減少(36 kg、6 kg減、標準体重比82%)、動悸、息切れで受診。K 4.0mEq/Lで正常。12誘導心電図は正常洞調律、ホルター心電図で動悸・息切れ・胸痛時に心電図変化を認めず。心エコーで冠動脈起始部に異常を認めず壁運動良好だが大動脈弁逆流軽度、BNP 48 pg/mLと軽度上昇。臥位から立ち上がって壁にもたれ、数分で改善する発作を認めた。各種画像検査はパニック発作を来し予定通り進まず。徐々に食欲や動悸は回復傾向を示した。2か月後、自宅で苦悶後に心肺停止し死亡。搬送・胸骨圧迫後、CK-MB 4.1 ng/mLで正常、TnI 60.4 pg/mLと微増のみで、pH 6.862だがK 4.1mEq/Lと急変前の低K血症を示唆。病理で起始部周囲の高度冠動脈狭窄、バルサルバ洞に限局した肉芽腫炎症を示唆する組織球優位の炎症、一部では外膜からのvasa vasorum周囲の炎症細胞浸潤、さらに、炎症が高度な部位では大動脈全層の弾性線維断裂を認めた。【考察】病理所見から“大動脈起始部に限局した高安動脈炎”が考えられた。本例にみられた“起立して壁にもたれる発作”は狭心発作であり、突然死は冠動脈狭窄による虚血と低K血症を背景に致死的不整脈に至ったと考察する。こうした病態はきわめて稀であるが、診断が難しく重要なため、病態の認識が大切と考えられた。