[I-CPD1-5] 事業化の予見が困難な小児医療機器開発の挑戦 ―アカデミアと行政の支援の活用―
キーワード:新規心・血管修復パッチ, 小児医療機器開発, アカデミアと行政の支援
大阪医科薬科大学、福井経編興業株式会社および帝人グループで共同開発した先天性心疾患の外科治療に使用する新規心・血管修復パッチが、2023年7月に製造販売承認を取得し2024年3月に特定医療保険材料として保険収載された。本品は、吸収性の糸と非吸収性の糸による特殊な構造の編物を架橋ゼラチン膜で覆い一体化した柔軟なシートである。手術で心臓や血管に縫着された後、ゼラチン膜および吸収性の糸が徐々に分解し自己の組織が本品を包むように形成され埋植部が修復される設計となっている。異物反応や石灰化などの問題が発生しにくくなることを狙った製品である。医療機器製販企業にとって、全世界で未解決のまま放置された医療課題を解決する製品開発は社会的な使命として重要と認識しつつも、症例数が少なくかつ開発難度の高いクラスⅣの小児用医療機器の開発に踏み切ることは事業採算性の観点でも躊躇することが多い。今回の本品開発にあたっては、アカデミアからの真のニーズのもと、製品開発の入口で経産省およびAMEDからの助成金支援を得たことが開発を進めるドライビングフォースとなった。また、本学会の支援による治験体制構築がスムーズな治験実施を可能とした。さらには、先駆的医薬品等指定制度(旧:先駆け審査指定制度)の活用による製造販売承認の迅速審査、厚労省の支援による保険収載など、アカデミアや行政の強力な支援によって、治験から薬事承認、保険償還に至る開発後期の難しいプロセスを乗り切ることができた。加えて、HBD for Childrenの支援によるFDAとのコミュニケーション開始など海外展開にも光が見えてきた。今回の開発を通じて、新たな小児医療機器の事業化を目指す企業にとって、本学会や行政からの支援をタイムリーかつ有機的に活用することは有益であると考える。本セッションでは、本品の開発の実際とアカデミアや行政からの支援について具体的に紹介をしたい。