[I-P01-1-10] 胎児期に指摘された肺動静脈奇形をきっかけに診断した、新規ENG遺伝子変異によるOsler病の兄妹例
キーワード:Osler病, ENG遺伝子変異, 肺動静脈奇形
【背景】 Osler病は動静脈奇形(AVM)を特徴とする遺伝性疾患であるが、小児期に臨床的診断基準を満たす事は少ない。一方で小児期から喀血や脳出血といった重篤な合併症を発症する事もあるため、早期に診断することが肝要である。今回、胎児期から指摘された肺AVMの症例をきっかけに新規ENG遺伝子変異によるOsler病の兄妹例を経験したので報告する。 【症例】 2歳女児、胎児期より肺AVMを指摘され、出生後の造影CT検査で左肺にAVMを認めた。症状の出現なく経過し、9ヶ月齢で肺AVMに対するcoil embolizationを待機的に試行した。父に肺AVMの既往があったため、本症例に遺伝子学的検査を実施したところ、既報にないENG遺伝子のインフレーム欠失を認めた。4歳兄も精査を進めた結果、皮膚粘膜の毛細血管拡張病変、脳AVM、妹と同様の新規ENG遺伝子変異を認めた。病原性の高さを示すPROVEAN scoreは-9.16と高値を示した。父を詳細に問診、診察したところOsler病の臨床診断基準を満たし、本症例と兄も臨床的にOsler病と診断した。 【考察】 胎児エコーで本症例の肺AVMが指摘されたことによって、出生後の状況に応じた対応が可能となった。また、家族への問診と診察、遺伝子学的検査と画像検査をすすめ、本症例、同胞に対しOsler病と早期に診断できた。新規遺伝子変異は、機能的な評価が困難で病因との関連性を証明することは難しい事が多い。既報では同部位のミスセンス変異が確認されており、機能的には血管形成に重要な因子であるBMP-9を介したシグナル伝達を阻害することが判明している。兄妹ともに、同様のインフレーム欠失がある事とPROVEAN scoreから、本遺伝子変異はOsler病の原因であると判断し得た。 【結語】胎児期からの問診、画像評価、出生後の遺伝子学的検査は、Osler病の早期診断を容易にし、合併症の回避を可能にした。