[I-P01-2-08] 遺残左上大静脈に流入する臍静脈還流異常をもった静脈管無形成の初胎児診断例
キーワード:胎児診断, 静脈管無形成, 左上大静脈遺残
【はじめに】まれな病態である静脈管無形成(ADV)のうち肝外への側副血行を有するものは、臍静脈血が静脈管や門脈系の血管抵抗による血流量制御を受けずに胎児右心系に流入するため、容量負荷が過剰になり、胎児心不全になることがある。今回我々は臍静脈が直接遺残左上大静脈に流入するまれな側副血行を持ったADV症例を胎児診断したので報告する。
【症例】-1.8SDの胎児発育不全を指摘され当院産科を受診した際、左房後方の異常血管を指摘され、在胎25週5日に当科を紹介受診した。胎児内の臍静脈が胃泡の外側背方を左胸腔内外側に沿って上行して左上大静脈に合流し、巨大な左上大静脈・冠静脈洞から右房に還流していた。他には明らかな心血管構造異常はなかった。32週時にはCTARが約40%、右心系特に右房の拡張が明らかでCelermajer indexは0.85まで増大したが、胎児水腫・重度三尖弁逆流・収縮性低下を認めず、cardiovascular profile scoreは9点以上で経過した。在胎33週6日、成長停止、児心拍低下のため緊急帝王切開で出生。生下時体重1091g(asymmetrical SGA)、Apgar score 7点/9点。生後左右心臓のアンバランスは急速に消退し心胸郭比は53%で、経過を通じ心不全兆候は出現しなかった。他の臓器異常・染色体異常・左上大静脈遺残以外の先天性心疾患・門脈体循環短絡は認めなかった。
【考按】胎児診断されたADVは約2割が孤発性で、孤発性では死亡例は少ないとされている。extrahepatic drainageを持つものではその流入部位として、右房、下大静脈、まれに腸骨静脈や腎静脈があると報告されている。検索した限り、本症例は臍静脈が左上大静脈へ流入する最初の報告例である。本症例では、児への容量負荷過剰による心拡大を認めたが、胎児心不全や巨大冠静脈洞に伴う左心系の低形成には至らなかった。ADVに関しては至適観察間隔やリスクファクターなどに不明な点が多く、今後の症例蓄積が待たれる。
【症例】-1.8SDの胎児発育不全を指摘され当院産科を受診した際、左房後方の異常血管を指摘され、在胎25週5日に当科を紹介受診した。胎児内の臍静脈が胃泡の外側背方を左胸腔内外側に沿って上行して左上大静脈に合流し、巨大な左上大静脈・冠静脈洞から右房に還流していた。他には明らかな心血管構造異常はなかった。32週時にはCTARが約40%、右心系特に右房の拡張が明らかでCelermajer indexは0.85まで増大したが、胎児水腫・重度三尖弁逆流・収縮性低下を認めず、cardiovascular profile scoreは9点以上で経過した。在胎33週6日、成長停止、児心拍低下のため緊急帝王切開で出生。生下時体重1091g(asymmetrical SGA)、Apgar score 7点/9点。生後左右心臓のアンバランスは急速に消退し心胸郭比は53%で、経過を通じ心不全兆候は出現しなかった。他の臓器異常・染色体異常・左上大静脈遺残以外の先天性心疾患・門脈体循環短絡は認めなかった。
【考按】胎児診断されたADVは約2割が孤発性で、孤発性では死亡例は少ないとされている。extrahepatic drainageを持つものではその流入部位として、右房、下大静脈、まれに腸骨静脈や腎静脈があると報告されている。検索した限り、本症例は臍静脈が左上大静脈へ流入する最初の報告例である。本症例では、児への容量負荷過剰による心拡大を認めたが、胎児心不全や巨大冠静脈洞に伴う左心系の低形成には至らなかった。ADVに関しては至適観察間隔やリスクファクターなどに不明な点が多く、今後の症例蓄積が待たれる。