第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

胎児心臓病学

ポスター発表(I-P02-2)
胎児心臓病学2

2024年7月11日(木) 14:20 〜 15:20 ポスター会場 (2F 多目的ホール)

座長:三好 剛一(国立循環器病研究センター 研究振興部)

[I-P02-2-09] 成人発症抗SSA抗体関連房室ブロックに類似した発症様式を呈した胎児完全房室ブロック ~胎児期における可逆性完全房室ブロック症例の存在~

齋藤 寛治, 清野 精康, 高橋 卓也, 佐藤 啓, 滝沢 友里恵, 桑田 聖子, 中野 智, 齋木 宏文, 小山 耕太郎 (岩手医科大学 小児科学講座 小児循環器病学)

キーワード:抗SSA抗体陽性妊婦, 免疫原性房室ブロック, 胎児完全房室ブロック

背景:免疫原性胎児完全房室ブロックは胎盤経由の抗SSA抗体が関与し、一旦完全房室ブロックに至ると不可逆と考えられている。一方、近年SSA抗体に起因する進行性房室ブロックの報告が成人例において散見される。今回、成人発症に類似した免疫原性房室ブロックを呈した症例を経験した。症例:在胎39週男児。在胎38週まで特に異常は指摘されなかったが、徐脈・胎児水腫のため当院母体搬送となり、緊急帝王切開で出生した。母体抗SSA抗体価が高く、胎児免疫原性完全房室ブロックと診断された。ステロイドを使用していたが循環動態が次第に増悪したため、準緊急的一時ペーシングを施行したところ、数時間でI度房室ブロックに復し、3日後に一時ペーシング離脱、以後房室ブロックの発症はなかった。各種ウィルス検査は陰性であり,抗SSA抗体に起因する胎児房室ブロックと考えられていたが, 発症時期が遅い、可逆性、二枝ブロックを残したという3点で典型的胎児免疫原性房室ブロックの臨床経過と異なったため, 3歳時に母胎抗SSA抗体分画解析を施行した.抗SSA52kDa, 抗SSB抗体がともに陰性、抗SSA60kDaが強陽性であった。考察:本症例は診断時には抗SSA抗体に伴う免疫原性房室ブロックと考えられていたが,発症が遅く, 完全房室ブロックに至っても可逆性であるという点で典型的な免疫原性房室ブロックとは異なると判断した. 実際に抗SSA抗体-52kDaは陰性であり, 近年成人で報告が増加している,。非52kDA抗SSA抗体による伝導障害を伴う心筋炎が妊娠後期に発症したものと推察した。二枝ブロックを残したという点でも免疫原性心筋炎の病態に起因する伝導障害の可能性が示唆され, 従って成人型免疫原性房室ブロックと同様に、今後房室ブロックに至る可能性を考慮し経過観察を継続している。