第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

成人先天性心疾患

一般口演17(II-OR17)
成人先天性心疾患

2024年7月12日(金) 16:40 〜 17:40 第6会場 (4F 401-403)

座長:片岡 功一(広島市立広島市民病院 小児科)
座長:島田 衣里子(東京女子医科大学 循環器小児・成人先天性心疾患科)

[II-OR17-06] Fontan循環とTOF術後患者の血行動態の違い-Fontan循環でCIは本当に低いのか-

川崎 有希1, 中村 香絵1, 佐々木 赳1, 藤野 光洋1, 吉田 葉子2, 鈴木 嗣敏2, 荒木 幹太3, 小澤 秀登3, 鍵崎 康治3, 江原 英治1 (1.大阪市立総合医療センター 小児循環器内科, 2.大阪市立総合医療センター 小児不整脈科, 3.大阪市立総合医療センター 小児心臓血管外科)

キーワード:Perfusion pressure, Fontan, 心拍出量

【背景】Fontan循環では肺心室を欠き前負荷が減少するため、二心室循環と比較して中心静脈圧(CVP)が高く心拍出量(CI)は低下し、Perfusion pressure(PP)は低値であると考えられている。しかし実際に心臓カテーテル検査による血行動態指標を比較した報告は少ない。
【目的】Fontan術後とTOF術後患者における侵襲的血行動態指標を比較検証する。
【方法】対象は当院で2017-2023年に18歳以上で心臓カテーテル検査と運動耐容能検査を同時期に行なったFontan術後とTOF術後患者。複数回検査が行われていた例では最新の検査を採用した。診療録より患者背景を、心臓カテーテル検査データベースよりCVP, 平均体血圧 (mSP), 肺動脈楔入圧, CI, 体血管抵抗 (SVRI)などの指標を抽出し、Fontan術後(F群)とTOF術後(T群)で比較した。また両群のうち、%peakVO2≧54% (F群中央値を採用)の例において同様に両群間比較した。
【結果】対象はF群49例, T群27例。年齢中央値(範囲)23.6 vs. 26.1歳, 体表面積1.57 vs. 1.53 m2。F群のうち右室体心室20例(41%), T群のうち肺動脈閉鎖7例 (26%)。%peakVO2は54.6 (35.8-86.0) vs. 61.9 (42.6-81.0), (p<0.01)。F群はT群に比しCVPは有意に高く、mSP, PP, 肺体血流比, SVRI, SaO2, 体心室EF, PAIが有意に低かった(p<0.05)。両群でCIに差はなかった(2.4 vs. 2.3 L/min/m2)。%peakVO2≧54%の45例(F群24例, T群21例)における検討では、F群はT群に比しCVPは有意に高く、PP, SaO2, SvO2, PAI, 体心室EF, 体心室拡張末期容量は有意に低値であった(p<0.05)。両群で%peakVO2, CIに差は認めなかった(2.6 vs. 2.3 L/min/m2)。
【考察】成人期Fontan術後患者ではTOF術後患者に比して、体血圧低値やCVP高値によりPPは有意に低値で、SVRIは低下していた。CIは低くなく、右左シャントによる前負荷増加や体血管抵抗の低下により、CIが維持されている可能性が示唆された。