第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

集中治療・周術期管理

ポスター発表(II-P01-2)
集中治療・周術期管理1

2024年7月12日(金) 12:40 〜 13:40 ポスター会場 (2F 多目的ホール)

座長:大崎 真樹(東京都立小児総合医療センター)

[II-P01-2-08] 低張輸液による先天性心疾患の術後管理における低ナトリウム血症の発症とその危険因子

三森 宏昭1, 武田 真梨子1, 森本 健司1, 森川 和彦2, 渡邉 伊知郎1, 齊藤 修1, 本田 雅敬2 (1.東京都立小児総合医療センター 集中治療科, 2.東京都立小児総合医療センター 臨床研究支援センター)

キーワード:低ナトリウム血症, 輸液管理, 周術期管理

【背景】集中治療を要する重症小児において低Na血症は死亡率上昇と入院期間の延長につながることが知られており、各種ガイドラインを始めとしてPICU(pediatric intensive care unit)における維持輸液は等張液の使用が強く推奨されている。一方で先天性心疾患術後患者については輸液製剤に関するガイドラインはなく、国内調査ではブドウ糖液が選択される傾向にある。当院でもブドウ糖液を維持輸液として使用しているが、低Na血症について調査した報告は少ない。【目的】先天性心疾患術後患者の低Na血症(135mEq/L未満)の発症頻度と重症度を調査し、そのリスク因子を検討する。【方法】当院で行った先天性心疾患手術患者を対象にその背景、入室後72時間までの血中Naの推移、低Na血症の発生頻度およびその程度、水分出納などを後方視的に検討した。新生児は除外した。【結果】2022年4月から2023年3月までに対象は76例、うち男児44例、心臓以外の奇形や染色体異常は35例、平均月齢14.8±21.5、平均体重7.3±4.2kgだった。RACHS-1スコアは1点が4例、2点が38例、3点が29例、4点が5例だった。術直後、術後24、48、72時間での血中Na濃度(mEq/L)は 141.8±4.3、136.6±3.7、134.3±3.3、133.7±3.5と経時的に低下していた。経過中に73.6%が低Na血症をきたし、130mEq/L未満の重度低Na血症が11.8%発生していた。単心室または姑息術を施行した群においては重度低Na血症の発生率は23%と二心室修復症例と比較し高かった。【結語】当院における先天性心疾患術後患者の低Na血症発生率は既報と比較しても高く、単心室症例や姑息術を施行した場合、重度低Na血症の発生率はより高かった。容易に介入可能である維持輸液量や輸液製剤の変更を行ったうえで、さらなる調査が望まれる。