[II-P02-6-09] 広範な心筋障害により無脈性電気活動が持続した劇症型心筋炎の1例
キーワード:劇症型心筋炎, 心筋生検, 無脈性電気活動
【症例】特に既往のない14歳女児。入院前日に発熱、頭痛、胸痛を主訴に前医を受診し、徐脈、低血圧、心筋逸脱酵素の上昇を認め急性心筋炎の診断で当院へ搬送された。来院時、心収縮は維持されていたが、数時間で、心収縮低下、心室頻拍を呈し、心原性ショックのためVA-ECMOを導入した。翌日からQRS波形が消失し、P波のみとなった。入院4日目に心室内血栓が疑われ、開胸し、左室ベントおよび右房右室にペーシングリードを留置した。その際の右心耳心筋生検で心筋萎縮、融解、空胞変性、間質のリンパ球浸潤を認め、リンパ球性心筋炎と確定診断した。心室ペーシングを行っても心収縮はなく、無脈性電気活動の状態が持続した。Stenotrophomonas maltophilia菌血症、多発脳梗塞、肺梗塞を合併し、ECMO継続を断念し、入院18日目に永眠。病理解剖で両心室筋の全周および全層におよぶ心筋脱落、壊死、マクロファージとCD3陽性Tリンパ球の浸潤を認めた。両心房筋にも同様の所見を認めたが、心筋脱落は心室の方が顕著であった。線維化組織の置換は認めなかった。
【考察】急速に心電図変化が進行し、19日間QRS波形の出現をほぼ認めず、ペーシングに無反応であり、心収縮の回復に至らなかった。本邦の成人劇症型心筋炎の調査では、発症時の心室頻拍や洞調律消失、心筋組織における広範な心筋細胞障害と、3か月以内の死亡率、心臓移植率の相関が報告されている。本症例において、発症時の不整脈、心筋全層におよぶ高度な炎症を認め、残存心室筋が少なく、心筋の電気的活動の回復が困難であったことが示唆された。
【結論】劇症型心筋炎における心筋組織像は予後に大きく関連し、広範な心筋壊死を呈する症例では、早期の集学的治療に対する反応が不良である可能性がある。
【考察】急速に心電図変化が進行し、19日間QRS波形の出現をほぼ認めず、ペーシングに無反応であり、心収縮の回復に至らなかった。本邦の成人劇症型心筋炎の調査では、発症時の心室頻拍や洞調律消失、心筋組織における広範な心筋細胞障害と、3か月以内の死亡率、心臓移植率の相関が報告されている。本症例において、発症時の不整脈、心筋全層におよぶ高度な炎症を認め、残存心室筋が少なく、心筋の電気的活動の回復が困難であったことが示唆された。
【結論】劇症型心筋炎における心筋組織像は予後に大きく関連し、広範な心筋壊死を呈する症例では、早期の集学的治療に対する反応が不良である可能性がある。