[II-P03-6-03] 後側方開胸心房中隔欠損閉鎖術140例の経験
キーワード:MICS, ASD, 低侵襲手術
【背景】心房中隔欠損(ASD)閉鎖術の第一選択はカテーテル治療であるが、適応とならなかった患者の低侵襲治療への需要は高く、その受け皿として外科治療にも更なる利点が求められる。当院ではASDに対しては右後側方開胸アプローチを第一選択としている。本法は胸骨切開を要さず低侵襲で、安静期間が短く、縦隔炎の心配もない。また手術創が背部にあり皮膚活線に沿った切開は美容的に優れている。一方で広背筋と肋間筋を切離するため、成長後の肩関節の異常や、前胸部の知覚異常に懸念がある。【対象と方法】2014年7月から2023年12月まで当院で行った右後側方開胸ASD閉鎖術の連続140例(O群)を対象とした。同時期に行われたカテーテル的閉鎖術90例(C群)と患者背景を比較した。また、外科手術後2年以上経過した患者にアンケートを行い、美容的満足度と前胸部の知覚異常を(1:非常に良い、2:良い、3:普通、4:良くない、5:悪い)で評価し、肩甲骨の位置異常と運動制限を模式図で評価した。【結果】O群で1例出血に対する再手術を行った。C群で7例の治療断念があった。O群の年齢は6歳(0-20)、体重は19kg(6.4-59.5)で、C群の10歳(5-33)、33.6kg(15-66.5)よりも有意に小さかった(P<0.001)。術後入院日数はO群が7日(4-12)で、C群の4日(2-8)よりも有意に長かった(p<0.001)。体肺血流比はO群が2.2(1.2-4.8)で、C群の1.6(0.8-2.8)よりも有意に高かった(p<0.001)。美容面と知覚の満足度はそれぞれ1.3±0.6および1.2±0.5であった。肩甲骨の位置は全ての患者で正常で、肩関節の運動は、屈曲と外転の1例と、伸展の3例で若干の制限があった。【結論】右後側方開胸ASD閉鎖術は、低侵襲でかつ美容的に優れ、遠隔期の肩関節機能にも影響がなかった。