[II-P03-6-07] A case of right pulmonary artery banding for right pulmonary arteriovenous fistula after bidirectional Glenn in a polysplenia patient
Keywords:肺動静脈瘻, 多脾症, 姑息術
【背景】機能的単心室の治療において、遠隔期の肺動静脈瘻(PAVF)の発生によるチアノーゼは課題である。フォンタン未到達患者に発生した巨大なPAVFに対して、右下肺動脈絞扼術を施行し、QOLの改善が得られたので報告する。【症例】多脾症・三尖弁閉鎖・先天性胆道閉鎖症に対して、他院にてB Tシャント・葛西手術・両方向性グレン手術などが施行されていた患者。3歳時のTCPC手術中に側副血管からのBack flowが著明に多く、胆道閉鎖の合併もあることから肝静脈圧の上昇を懸念しフォンタンは断念された。以降在宅酸素療法を導入されていたが、13歳時に右下に血管造影でも明らかなPAVFの形成を認めた。23歳時には左肺動脈を逆行した血液が右下PAVFに流入していると診断された。当院紹介受診時27歳、女性で、経鼻酸素4LでSpO2は安静時81%、歩行時は60%。前医でのカテーテル検査時に、右肺動脈のバルーン閉塞試験にて酸素化の改善を認める一方で、巨大PAVFに対する塞栓術後に脳梗塞を発症した経験を参考に、完全閉鎖ではなく、微量の順行血流を残す目的で右肺動脈絞扼術を施行することにした。【手術】胸骨正中切開で手術開始したが、癒着が強固のため、人工心肺補助下に剥離を行なった。右下肺動脈を同定し、人工心肺終了後に絞扼を確定し、上大動脈圧の上昇は15mmHgにとどまった。またFiO2が0.6で、SaO2は79から89%に上昇した。手術時間8時間8分であった。術後肺血流シンチによる右左シャント率の測定では64.4%から11.6%に低下することが確認され、4D MRIでは上大静脈血流はほぼ全て左肺動脈に向かって順行性であることが確認された。身体所見上も改善し、経鼻酸素3Lで50m歩行にてもSpO2は70%台後半を保っていた。【結語】成人期の重度のチアノーゼをきたす巨大PAVFに対する部分肺動脈絞扼術は症状緩和が期待できる術式であるが、以後の経過、特にPAVFについては慎重な観察が必要であろう。