第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

会長要望シンポジウム

会長要望シンポジウム3(II-PSY3)
気道狭窄を合併した心疾患の治療戦略

2024年7月12日(金) 09:40 〜 11:20 第3会場 (4F 409+410)

座長:田中 敏克(兵庫県立こども病院 循環器内科)
座長:大木 寛生(東京都立小児総合医療センター 循環器科)

[II-PSY3-8] 先天性気管狭窄を合併した先天性心疾患の治療戦略:小児循環器医の立場から

大木 寛生1, 吉村 幸浩2, 下島 直樹3, 森本 健司1,4, 吉田 真由子1, 山口 修平1, 山田 浩之1, 小山 裕太郎1, 永峯 宏樹1, 前田 潤1, 三浦 大1 (1.東京都立小児総合医療センター 循環器科, 2.東京都立小児総合医療センター 心臓血管外科, 3.東京都立小児総合医療センター 外科, 4.東京都立小児総合医療センター 集中治療科)

キーワード:先天性気管狭窄, 先天性心疾患, 治療戦略

【背景】スライド気管形成術(ST)適応となる先天性気管狭窄(CTS)に複雑な先天性心疾患(CHD)を合併した場合の治療戦略は定まっていない.
【目的】STを行ったCHD合併CTSの治療成績を総括した.
【方法】対象は当院でSTを行った全例.治療戦略グループ(G)をSTのみ0,CHD同時手術1,同一入院段階的手術(救急搬送含)2,別入院段階的手術3に分類.性,ST施行月齢,体重,生死,観察期間,気管最狭窄径/狭窄長率(DLR),片肺無低形成(U),気管気管支・三分岐・橋気管支,軟化症の有無,挿管・体外式膜型人工肺(ECMO)既往,CHD重症度(無0,単純1(短絡疾患,肺動脈スリング(PAS)),複雑2),体外循環時間,術後ECMO,縦隔炎,カテーテル治療(I)の有無について比較.χ2,Kruskal-Wallis,Kaplan-Meier,log-rank,Cox回帰検定を行いp<0.05を有意とした.
【結果】98(女42)例のうちG0/1/2/3各々29/48/10/11例.CHD合併80(82%)例のうちCHD1/2各々63/17例.PASが最多51(単独28,併存23)例,短絡疾患35,房室中隔欠損2,大動脈肺動脈窓1,大動脈縮窄4、Fallot四徴症6,単心室1,左心低形成1,三尖弁閉鎖1,純型肺動脈閉鎖1例.G0で男23/29(79%)と多かった.体重(kg)がG0で7.0±2.2と高くG2で4.7±1.2と低かった.PAS,軟化症がG1で各々41/48(85%),23/45(51%)と多かった.CHD1 はG1で45/48(94%),CHD2はG1/2/3で各々3/48(6%),5/10(50%),9/11(82%)を占めた.IはG1/2/3各々18/48(38%),4/10(40%),5/11(45%).周術期Iは体循環動脈管ステント1,右室流出路ステント2例.死亡率はG0/1/2/3各々3/29(10%),6/48(13%),5/10(50%),1/11(9%)とG2で高かった.5年生存率はG0/1/3各々89.1%,87.3%,87.5%と比較しG2で45.7%と低かった。Cox回帰で体重,ECMO既往,UでなくCHD重症度がハザード2.67で有意であった.
【結論】G2予後改善にはバランスの良い血行動態を目指した姑息術・カテーテル治療によるST術前状態の安定化をさらに追及する必要がある.