[III-OR25-02] 右室流出路再建術後遠隔期に摘出された石灰化expanded polytetrafluoroethylene (ePTFE)材料の組織分析
キーワード:右室流出路再建, 遠隔期再手術, extended polytetrafluoroethylene
【背景】右室流出路再建術後遠隔期に再手術で摘出されたePTFE製材料に生じる石灰化の詳細な分析の報告は乏しい。【目的】術後遠隔期に摘出した石灰化ePTFE製材料を組織分析しその機序を考察すること。【方法】当院で実施の乳児期での右室流出路再建後2例(術後10年の弁付き導管、術後15年の厚さ0.1mm弁尖)の遠隔期に摘出したePTFE材料を、トルイジンブルー染色を加えた(TB-OM)病理観察に加え、μCTを用いた石灰化の局在把握、走査電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分析(SEM-EDS)を使用した元素分析を行った。【結果】導管:内皮層は自己組織吻合部近傍のみに限局し、ePTFEの内外を被覆する膠原繊維組織の血管縫合部に一部骨化像あり。内腔側ePTFE間隙に石灰沈着線維組織を伴って空砲化細胞が浸潤(TB-OM)。石灰化は弁尖縫着部と血管吻合部を中心に広範囲存在(μCT)し、同部位にCaのみでなくP元素を検出(SEM-EDS点分析)。弁尖:縫着部を中心に内皮層を有するが高度に石灰化を伴う線維性組織にePTFEが埋没され蛇行。ePTFE間隙(1μm程度)への細胞浸潤は無いものの、一部貫壁性の石灰化(TB-OM)が広範囲に形成されていた(μCT)。CaとP元素が導管同様に検出され、組織像での非石灰化部位にも間隙内石灰化が検出された(SEM-EDS面分析)。【考察】ePTFE材料の石灰化は、導管間隙への細胞(死滅)、弁尖間隙への血漿成分の浸潤が由来と考えられた。またP元素の検出により、動脈硬化での血管石灰化と同様な機序の存在が示唆された。【結語】詳細な組織分析により、右室流出路再建術後に埋植されるePTFEの遠隔期石灰化の機序の解明に近付いた。同時にこの機序は、医療材料の改良に要求される解決課題と考えられた。