[III-P01-2-09] 冠動脈血栓塞栓にて日齢0に外科的血栓除去術を施行した新生児心筋梗塞の1例
キーワード:新生児, 心筋梗塞, 冠動脈血栓塞栓
【背景】新生児心筋梗塞は稀な疾患で, 死亡率は40-50%と報告されている.今回, 出生後早期にECMO導入に至り外科的血栓除去術を施行した冠動脈血栓塞栓による新生児心筋梗塞の1例を報告する. 【症例】妊娠40週6日 分娩停止のため, 緊急帝王切開で出生. 出生体重は3606g, Apgar scoreは3/5点(1分/5分値)であった. 出生後呼吸障害あり, 前医に搬送され, 新生児遷延性肺高血圧症の診断でNOを開始された. 心エコーで大動脈弁直上に腫瘤性病変と高度左室収縮能低下を指摘され, 精査目的で当院に転院搬送された. 転院直後に徐脈となり心肺蘇生を開始し, 右内頸からV-A ECMOを導入した. 当院の心エコー検査で大動脈弁直上に3-5mmの高輝度エコー像があり, RCAの血流は確認できるが, LCAの血流が逆行性になっていた. 腫瘤性病変によるLCA閉塞が主病態と考え, 緊急で腫瘤摘出術を施行した. 術中評価で大動脈弁直上の腫瘤性病変はLCA内まで連続する血栓と判明し, 血栓除去を行い, 経食道心エコーでLCA起始部付近の血流は順行性に改善. 術後ECMO管理を継続し, 日齢5に大動脈造影検査を施行したが残存血栓はなかった. その後, 左室機能は改善傾向であったが, 日齢7に血液培養でStaphylococcus haemolyticusを検出した. 以降抗菌薬を継続し, 透析回路や点滴の入れ替えを行うも, 菌血症がコントロールできず, 心機能もLVEF 10-20%のまま改善しなかった. 菌血症治療のため, ECMOは右頸部からのV-Aからcentral ECMOへの交換が必要と判断, 心臓移植の可能性も考慮し, 移植施設へ日齢15に転院搬送した. 【結語】新生児心筋梗塞は母体要因として血栓素因疾患, 新生児要因として先天性心疾患, 血栓素因, 新生児仮死等の可能性を指摘する報告があるが, 非常に稀で, その成因は明確にされていない. このうち冠動脈血栓塞栓の報告が散見される.新生児の左心不全を見た場合は冠動脈血栓塞栓を含めた心筋梗塞を鑑別に挙げることが重要である.