[III-P02-1-08] 心室中隔欠損症術後に腎ヘモジデローシスを発症した一例
キーワード:心室中隔欠損症, 腎ヘモジデローシス, 遺残短絡
【背景】腎ヘモジデローシスは、血管内溶血により破壊された赤血球から生じた鉄が、近位尿細管上皮から吸収されヘモジデリンとして沈着する疾患であり、原因として発作性夜間ヘモグロビン尿症などの溶血性疾患のほかに、弁置換術後などの外科的要因でもおこりうる。通常腎機能に影響を及ぼさないとされているが、多量の沈着では腎不全に陥ることもあるとの報告もある。先天性心疾患術後の報告例はほとんどなく、今回心室中隔欠損症術後に血管内溶血が持続し、腎ヘモジデローシスを来たした症例を経験したので報告する。【症例】3歳女児。日齢3に心雑音を指摘され心室中隔欠損症の診断に至った。体重増加不良を来たし、生後6ヶ月で心内修復術(輸血あり)が行われた。術後経過は良好であったが、少量の遺残短絡が認められていた。1歳3ヶ月時に仙尾部陥凹に対してMRI検査を行ったところ、撮影範囲に含まれていた腎臓でT2強調像における皮質全周性の低信号域を偶発的に認めた。経過を振り返ると貧血は認めなかったが血中LDHは高値で経過しており、またハプトグロビンは測定感度以下であり慢性的な溶血が示唆された。非外科的要因である溶血性疾患の鑑別を行うもいずれも否定的であり、原因として遺残短絡による血管内溶血の可能性が考えられた。現在は自然閉鎖を期待しつつ経過観察を継続しており、明らかな腎障害は認めていない。【考察・結論】本症例では心内修復術後に小さな遺残短絡が残存し、術後から血管内溶血が持続していると考えられ、外科的要因により腎ヘモジデローシスが発症したと推定される。今回は他の目的による画像評価で偶発的に発見されたが、通常診療で心臓術後に腎臓の画像評価を行う機会は少なく、診断されていない症例も存在しうると考えられる。今後腎機能について慎重に経過を診ていく必要があり、遺残短絡を有し血管内溶血が疑われる症例では一度腎臓の画像評価を行う意義はあると考えられる。