[III-P02-3-03] 当院におけるACHD患者移行の現状と課題
キーワード:ACHD, 移行期医療, 医療体制
【背景】当院は県内唯一のACHD学会の成人先天性心疾患専門医修練施設であり、関係各科で月1回の症例カンファレンスをおこない移行を含めた管理方針を決定している。【目的】当院におけるACHD患者移行の現状と課題を明らかにすること。【対象および方法】2022年1月1日から12月31日までに当科再診外来を受診した15‐20歳のACHD患者207例(男107例、女100例)を、ACHDレジストリー登録の重症度分類に基づき4群に分類(軽症: 1群および1-2群、中等症: 2群、重症型: 3群)。診療記録より、合併基礎疾患、手術介入、投薬の有無、移行の現状(成人診療科に移行: T群、未移行: P群、フォロー終了: F群)について調査した。【結果】合併基礎疾患を伴う症例は30%で、なんらかの手術介入例は74%、投薬中の症例は25%だった。各年齢におけるF群を除いた成人診療科移行率は15歳:11.7%、16歳: 22.7%、17歳: 29.7%、18歳: 47.4%、19歳: 34.5%、20歳: 34.6%で、18歳まで移行率は徐々に増加し、高校卒業までに移行可能症例は移行を終了していたが、18歳以後移行率は減少しており移行困難な症例群が存在していると推測された。重症度別移行率は1群: 63.7%、1-2群: 46.7%、2群: 27.2%、3群: 10.0%で、軽症例ほど高く重症度に依存していた。合併基礎疾患を伴うACHD症例の移行率は25.0%で基礎疾患ないACHD症例(37.3%)に比べ低い移行率だった。【考察】当院では、成人期以降も継続診療が必要となるACHD患者が他院からの紹介患者も加わり、今後も年々積み重なっていく可能性が高い。移行の妨げとなるのはACHDの重症度と染色体異常などの基礎疾患の合併が推測される。【結論】ACHD担当医の育成と成人期移行医療体制の確立は急務であるが、専属のACHD担当医がいない当院の現状では、患者の状態に応じ関係各科が密に連絡を取り合い、主科が柔軟に交代できる体制が理想と考えられる。