第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

ポスター発表(III-P03-2)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患2

2024年7月13日(土) 11:00 〜 12:00 ポスター会場 (2F 多目的ホール)

座長:土井 拓(どいキッズクリニック)

[III-P03-2-10] 両側肺動脈血栓塞栓症に対し体外循環式心肺蘇生法を行った2症例

渡邊 康大, 長田 洋資, 中野 茉莉恵, 麻生 健太郎 (聖マリアンナ医科大学病院 小児科)

キーワード:肺血栓塞栓症, ECMO, ECPR

【緒言】肺血栓塞栓症(PE)は致死的疾患であり、早期診断とECMO導入を含めた早期治療が重要になる。当院で経験した小児PEの2例と小児PEの発生リスクや頻度に関する文献的考察を含めて報告する。
【症例1】15歳女児。既往に漏斗胸、縦隔血管腫あり。入院3日前より胃腸炎症状が出現。入院同日に嘔吐、頻呼吸を認め、救急要請。到着時はShock Vitalで、心エコーで右室圧は体血圧を上回っておりPH crisisと判断。肺血管拡張剤を含めた集中治療を行うものの低血圧、徐脈となりECMO導入を決断。手術室への移動中にVFを認め、ECPR開始。ECMO確立後に自己心拍再開、心停止からECMO確立までは23分であった。肺動脈造影で両側肺動脈に血栓を認め、緊急開胸血栓除去術を行った。入院4日目にECMO離脱したが、入院9日目に死亡した。
【症例2】15歳女児。既往に結節性紅斑あり。入院約1か月前より労作時呼吸困難を自覚。入院同日、突然の呼吸苦を認め救急要請。救急隊到着後に意識消失し、Asystoleを確認、CPR開始。病着後、心エコーでPHを疑う所見を認めた。入院後もCPRを継続したが自己心拍は安定せず、ECPRの方針とした。心停止からECMO確立までは約40分であった。造影CT検査で両側肺血栓塞栓と診断。緊急開胸血栓除去術を施行し血栓除去後にECMOは離脱。帰室後から大量の下血を認めており、慢性的な下痢の経過もあり、炎症性腸疾患が疑われ、上下部内視鏡検査を行ったところクローン病に特異的な所見を認めた。
【結語】PEは小児においては頻度が少ない疾患と考えられてきた。しかし近年Carpenterらは米国における小児入院症例を検討し、肺塞栓症の発生が14年間で10,000入院あたり9.8から24.7に増加したと報告している。PEは現在予想されている発生数よりも多い可能性がある。突然の発症で呼吸困難や胸部絞扼感を主訴とした患者でPHが疑われる患者ではPEも鑑別に挙げることが重要である。