[III-PSY4-5] 重症Ebstein病に対するStarnes手術の長期予後の検討
キーワード:Ebstein病, Starnes手術, 合併症
【背景】1991年に報告されたStarnes手術は重症Ebstein病(EA)患者の救命率を向上させたが、予後や合併症は不明な点も多い. 【方法】2000年1月1日より2023年12月31日までの間に、EAまたは高度な三尖弁閉鎖不全を伴う三尖弁異形成と診断され当院でStarnes手術を施行された患者を後方視的に検討した.【結果】対象は29例(女性15例,52%), EAが27例, 三尖弁異形成が2例であった。観察期間は中央値5.2年(IQR3.7~11.6、以下同様)であった。25例(86%)で胎児診断され、早産児は9例(31%)で、在胎週数38.1週(36.9~39.3)、出生体重2408g(2298~2862)であった。合併心奇形は心室中隔欠損症1例,ファロー四徴症1例。肺動脈閉鎖は11例、Circular shunt を呈していた症例は11例であった。三尖弁逆流(TR)は3度以上の重症が26例であった。Starnes手術時日齢は6日(1~75)でありCircular shuntの症例のうち3例は帝王切開での出生直後にStarnes手術が施行され、8例で肺動脈結紮を施行され翌日以降にStarnes手術を施行された。5例は両方向性Glenn手術(BDG)時にStarnes手術を施行された。三尖弁パッチのfenestrationは23例で作成された。2例(7%)がBDG待機中、4例(14%)がBDG術後でTCPC待機中であった。21例(72%)がFontan型手術(TCPC)に到達し、TCPC到達例のCVPは平均9(8-9)mmHg、peak VO2 87(74-96)% of normalであった。4例(14%)で計7回のfenestration閉塞が発生し全例で再手術を要した。初回Starnes手術の周術期死亡はなく、遠隔期で3例(10%)が死亡した。死因は、2例(月齢8と2歳時)が感染症で、1例(11歳時)がfenestration閉塞による右室内血栓形成,右室拡大による閉塞性ショックであった。全体での10年生存率は92%であった。【結論】Starnes手術後の症例のTCPC到達率は高く成績は良好だが、術後遠隔期にもfenestration閉塞が見られることがあり,重大な転帰をとりうるため慎重な経過観察が必要である。