日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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スポーツ文化研究部会 » 【課題A】グローバル課題の解決に向けてスポーツから何が提案できるか

スポーツ文化研究部会【課題A】口頭発表②

2021年9月7日(火) 13:30 〜 14:45 会場10 (Zoom)

座長:河西 正博(同志社大学)

13:45 〜 14:05

[スポーツ文化-A-06] 「スポーツと幸福」に関する文献研究(その2)

海外レビュー論文の検討

*君塚 豊1、清水 紀宏2、作野 誠一3、横山 剛士4、朝倉 雅史2、醍醐 笑部2、林田 敏裕1、柴田 紘希5 (1. 筑波大学大学院、2. 筑波大学、3. 早稲田大学、4. 金沢大学、5. 山梨学院大学)

本研究では「スポーツと幸福」に関する海外研究の動向を掴むための手がかりとして、先行するレビュー論文を収集しその傾向の整理を行った。まず、主要な論文検索データベース(Web of scienceとSPORTDiscus)を用いて先行のレビュー論文を収集した。キーワードにはスポーツ関連のものとして“sport”、“physical-activity”を、幸福関連のものとして“well-being”、“happiness”、“positive-psychology”を用いてタイトル検索を行った。また追加条件として「英語のみ」、「論文タイプ=レビュー」などの設定を施した。収集された論文数は全部で101編であった。そこから重複した論文やレビュー論文ではないものを除外し、最終的に35編の論文を分析の対象とした。分析の結果、第一に従来のレビュー論文においては幸福の指標について、高齢者や妊婦といった特定の対象に限定して測定された研究に絞ってそれぞれのレビューが行われている傾向がみられた。そのため包括的に研究動向を把握するようなレビューは行われてきていない。第二に、半数以上のレビュー論文の掲載ジャーナルはその名称に“sport”などの語を含まない、主に心理学や医科学系のジャーナルであった。第三に、スポーツや身体活動の種類や内容が個々の研究間で統一されていないことや、幸福に関する指標とその測定方法に課題が残ることを指摘する論文が多くみられた。第四に、スポーツや身体活動が幸福に資するという関係だけでなく、アスリートのパフォーマンスにWell-beingが影響するといった逆の関係性を想定した研究を扱うものもみられた。これらの結果を踏まえ、今後の課題として「スポーツと幸福」に関する研究知見のより包括的なレビュー、ならびに説明変数としてのスポーツや身体活動の検討などが挙げられる。