日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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体育心理学 ポスター発表

[03 心ーポー18] 賞罰条件による動機づけが行動調整に及ぼす影響

〇松井 花織1、高井 秀明1 (1.日本体育大学)

指導者が競技者のパフォーマンスに対して行う褒めや叱責といったフィードバックは、動機づけとして競技者の行動を調整し、効率的な学習方略になるといわれている(亀井・佐久間、2018)。しかし、時にはそれらがパフォーマンス発揮に大きな影響を及ぼす因子になる可能性がある(Baumeister, 1984)。また、特性不安が高い者ほど不安感情が高まりやすいことから(長谷川ら、2011)、個人の特性を考慮したフィードバックは有効な指導法に繋がるものと予想される。したがって、本研究では賞罰条件による動機づけが行動調整に及ぼす影響を特性不安から検討することとした。実験参加者は男性8名(平均年齢23.3±1.5歳)であり、STAIの特性不安の得点が平均の1SDを上回る者を高群とし、1SDを下回る者を低群とした。実験参加者には報酬と罰金を設定した条件下でボタン押しによる単純反応課題を実施させた。課題条件には、成功試行のみ報酬を与える報酬条件、失敗試行のみ罰金を課す罰金条件、成功試行には報酬を与え失敗試行には罰金を課す混合条件、報酬も与えず罰金も課さないニュートラル条件の4条件を設定した。また、ニュートラル条件以外の条件では、各試行後にFB音を鳴らし、正反応か誤反応かをフィードバックした。課題実施後にはVASによって課題中の主観的動機づけの度合いと主観的努力度を測定した。その結果、当然のことながら、STAIの特性不安の得点は高群が低群より有意に高かったが(p<.001)、反応時間とVASの得点は高群と低群に有意な違いがみられなかった。先行研究では、不安が高い者ほど誤反応後に生じるエラー関連電位のERN振幅が大きくなると報告されている(Moser et al., 2013)。したがって、本研究で用いた賞罰による動機づけの課題は、行動調整に影響を及ぼす課題設定ではなかったといえ、課題の再考が必要であろう。