日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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体育心理学 ポスター発表

[03 心ーポー20] クラシックバレエダンサーの自己愛とバレエ満足度・Well-beingに関する質的研究

海外で活動するプロダンサーのライフストーリーに着目して

〇大浦 朱生1、田巻 以津香2、松本 秀夫2 (1.東海大学大学院、2.東海大学)

 自己愛とは、一般に自分自身を愛することや大切に思うことを意味する。これまでの自己愛研究は、自己愛を病的なものとして捉え、パーソナリティ障害の一種として数多く行われてきた(カーンバーグ、1975; コフート、1971)。また、スポーツに関連した自己愛研究においては、競技レベルが高いアスリートと個人スポーツアスリートのナルシシズムスコアが高いことを指摘している(Vanghanら、2019)。しかし、日本人クラシックバレエダンサーの自己愛に着目した研究は見当たらない。
 そこで本研究は、ダンサーの自己表現や舞台で他人に魅せる経験が自己愛的特性の形成にどのように影響しているかを明らかにし、その特性とバレエ満足度やwell-beingとの関係を検討することを目的とした。
 対象は、複数回の海外留学経験を有し、現在海外のバレエ団で活動するプロダンサーとした。半構造化インタビューは、これまでの自身のバレエにおける経験について発話を求め、得られたテクストデータを質的に分析した。
 その結果、複数の舞台や留学経験によって、自己のダンサー像や身体像がネガティブなものからポジティブなものに変化し、自己の受容を伴って自己愛的になることが示唆された。特に、留学経験による指導スタイルや環境の変化は、自分自身の踊りを受け入れ、自信を持ってパフォーマンスすることに繋がることが推察された。また、身体に関する発話には、「海外で女性らしい身体や動ける身体を必要とされた」と述べ、この身体的変化が、身体に対する自己愛的特性を形成したと考えられる。さらに、バレエへの満足感やwell-beingについては、「バレエに満足できる時は来ない」・「踊っているだけで幸せ」との発話もあるが、自己愛的特性との明確な関係を明らかにするには至らなかった。