日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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体育心理学 ポスター発表

[03 心ーポー42] カウンセリングアプローチが競技力向上・実力発揮につながるまでの変容過程

〇奥田 愛子1、中込 四郎2 (1.びわこ学院大学、2.国士舘大学)

 アスリートの競技力向上・実力発揮を目的とした心理支援では、心理スキルの指導を中心とするメンタルトレーニングが展開されてきているが、一部のスポーツカウンセラーによる心理療法やカウンセリング技法を用いたアプローチもある。そこではアスリートが訴えた競技生活での問題の背景に心理的課題を想定し、その課題解決への取り組みのパフォーマンス発揮への有効性が報告されている。本研究では、あるアスリートの相談事例の面接記録よりカウンセリングアプローチによる競技力向上・実力発揮に資するまでの変容過程を明らかにすることを目的とした。

「練習と試合の差が大きい。大きな試合ほど自身をコントロールできない」と訴えて自発来談したターゲット種目を専門とするアスリートとの2週間に1回、50分を基本とした3年間45回の面接記録での内的体験の語りとパフォーマンスの共時的変化を追った。

 その結果、面接過程を大まかに振り返り、競技状況での戸惑いを訴えたⅠ期、競技遂行での気づきが見られたⅡ期、そして動きの意味を再考するⅢ期に分けることができた。各期の語りは、「自分の世界に入るのが難しい」「どうしても周りを見てしまう」「<動きの課題>はっきりと答えが出ないまま終わってしまった」(Ⅰ期)、「<動きの中で>大事なことがシンプルに考えられるようになってきた」「人に聞かれると、調子いいって言いながら大丈夫じゃなかった」「一つ一つを確実にしていかねばと思っているのに、結果のことばかり考えている」「今まで何とかダメな言い訳を作ってきた」(Ⅱ期)、「力で止めてもダメでバランスとりながらやることが大事」「結局原点に戻った」「ずっと同じことを続けることだってわかった」「何で動きに○○が必要か改めて考えた」(Ⅲ期)であった。このように面接過程は競技への体験的な語りの質的変化をもたらし、それは競技遂行の要を築く過程であったとも言い換えられる。