日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

講演情報

テーマ別シンポジウム

スポーツ文化研究部会 » 【課題C】多様なスポーツ文化の保存・流通・促進をいかに刷新していくか

スポーツ文化研究部会【課題C】テーマ別シンポジウム/スポーツ文化の浸透戦略(1):文化の保存・流通の批判的検討から

2021年9月8日(水) 15:30 〜 17:30 会場2 (Zoom)

コーディネーター:深澤 浩洋(筑波大学)
指定討論者:來田 享子(中京大学)

15:30 〜 16:10

[スポーツ文化-SC-1] スポーツ文化の保存と体育・スポーツ史研究

批判的検討から

*鈴木 明哲1 (1. 東京学芸大学)

<演者略歴>
東京学芸大学教育学部教授。博士(体育科学)。ヨーロッパスポーツ史学会(CESH)第64代フェロー。専門は体育・スポーツ史。かつては日本の体育・スポーツ史を戦間期、戦時下、戦後を対象時期として研究してきたが、現在は、戦後連合4ヵ国占領下オーストリアにおける体育・スポーツ史を研究している。
 1960年に丹下保夫は「運動文化は保存できない」と記したが、まさに至言である。スポーツ文化を保存する術はない。同様に体育・スポーツ史研究もスポーツ文化の保存を目的とした学問ではない。しかし、体育・スポーツ史研究者のこれまでの仕事、そしてこれからの仕事が、スポーツ文化の保存に何らかの貢献をなすとして期待されている。果たして体育・スポーツ史研究は、スポーツ文化の保存に貢献できるのか、否か。その可能性を探るためには、これまでの体育・スポーツ史研究という仕事を、自戒を込めながら批判的に検討する必要がある。
 そのためには、まずこれまでの研究スタイル(=仕事)を素朴に一から見直さなければならない。すなわちそれは資史料をエビデンスに歴史を叙述し、著書や論文にまとめ上げ、これまでの通説となってきた歴史像を切り崩し、新たな歴史像を提示していくという、ごく当たり前に繰り返されてきた仕事を疑うことからはじまる。研究の出発点は個々の研究者が抱く純粋な動機であり、資史料の渉猟を経て歴史像の再構築へと結実する。この過程を批判的に検討しながら、スポーツ文化の保存への可能性について報告する予定である。