日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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健康福祉研究部会 » 【課題B】認知機能の維持・改善に運動・スポーツはいかに貢献するか

健康福祉研究部会【課題B】口頭発表②

2021年9月8日(水) 09:00 〜 10:10 会場24 (Zoom)

座長:木伏 紅緒(早稲田大学)

09:20 〜 09:40

[健康福祉-B-07] 立位場面における複数選択肢下の運動計画

ターゲットステップ課題時の予測的姿勢制御による検討

*渡邉 諒1,2、樋口 貴広1 (1. 東京都立大学大学院人間健康科学研究科、2. 日本学術振興会特別研究員(DC2))

【背景・目的】スポーツ場面など相手の左右への動きに対応する必要がある状況では、相手が動きに反応するだけでなく、事前に複数の選択肢を予測して構えておくことが有益である。こうした運動計画のルールを理解する方法として、上肢動作研究ではgo-before-you-know-paradigmが用いられている。演者らは、このパラダイムを立位動作に応用したターゲットステップ課題を考案し、右足を内と外どちらかにステップする際の予測的姿勢制御から、複数選択肢下の運動計画のルールについて検討した。
【方法】若齢健常者8名を対象に実験を行った(うち分析対象者7名)。参加者は静止立位で前方のモニターに表示される選択肢(内、外)を判断し、その方向に配置された床目印にステップする課題を行った。Dual Target条件では、最初に内と外の選択肢が両方同時に提示される。参加者の体重移動検出後、どちらか一方の選択肢が残り、その方向の床目印に着地するよう求めた。 Single Target条件では、最初から一方向のみ表示され、参加者はその方向の床目印に正確に着地することが求められた。
【結果・考察】Dual Target条件における遊脚前の足圧中心左右移動量は、Single Target条件の外側着地時に比べて有意に増加した。一方、Single Target条件の内側着地時との間に有意な差は認めなかった。この結果は、内と外の2つの選択肢がある場合、内側を重視した準備を行っている可能性を示唆する。内や外に移動する前には目標方向に応じて重心を支持脚側へ加速させる必要があり、特により内側へステップする時ほど十分な加速が必要となることが知られている (Bancroft & Day 2016)。こうしたことから、立位場面で複数選択肢を考慮する状況では、全身移動コストの大きい選択肢を重視した運動計画がなされることが示唆された。