日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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スポーツ文化研究部会 » 【課題B】人々の生活に根ざした多様なスポーツ文化をいかに醸成していくか

スポーツ文化研究部会【課題B】口頭発表②

2021年9月8日(水) 09:00 〜 10:20 会場8 (Zoom)

座長:加藤 えみか(京都産業大学)

10:00 〜 10:20

[スポーツ文化-B-08] アソシエーションとしてのスポーツ事業組織について

新制度派経済学・組織の所有権理論による合理的なスポーツ事業組織モデルの考察

*張 寿山1 (1. 明治大学、スフィーダ世田谷FC)

現代において株式会社は資本主義市場経済を支える普遍的な事業組織モデルとなっている。当初は愛好者による自主及び自治を原則とするアソシエーションとして創設されたスポーツ組織も.スポーツ活動の一部の商品化に伴い、市場経済にその活動が組み込まれ、事業活動としての市場化及び産業化が進展し、スポーツ組織の株式会社化或いは市場の要求に対応できる株式会社に準じたガバナンスを具備した事業組織への変革が求められる傾向がある。

一方で、スポーツ産業の発展と規模の拡大に伴い、スポーツ事業が持つ特殊性についても研究が進み、スポーツ産業はいわゆる市場における自由で公正な競合を前提とする諸産業とは大きく異なる産業構造を持つことも明らかになっている。

本発表はスポーツ事業が持つ特殊性に対応する事業組織モデルとして株式会社が最も適切だといえるのかどうか、新制度派経済学における所有権理論を発展させ、組織の所有権に注目したHansmann(1996)が提唱する組織の所有権理論を枠組みに用いて検討する。この理論は、誰がその組織の所有者になるかによって効果的な運営が可能となる事業組織モデルが異なり、さらにそれぞれの産業が持つ特殊性によって誰が所有者になることが相対的に適切かを判断する合理的な基準を提供する。本発表では議論を整理しやすくするために、スポーツ事業組織としてトップ・リーグに参加しようとするトップチームを持つスポーツクラブを対象として考察を加える。日本においてはスポーツを足元で支える経済規模が数千万円から数億円のスポーツ事業組織の数がヨーロッパ諸国に比べて圧倒的に少ない。日本全体で1000程度のスポーツ事業組織としてのスポーツクラブの存在が期待されるが、これが全て株式会社として実現することは現実的な政策ではなく、アソシエーション型の事業組織モデルの創設が必要である。