日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

講演情報

専門領域別研究発表

専門領域別 » 保健

保健/口頭発表①

2021年9月9日(木) 10:30 〜 11:06 会場11 (Zoom)

座長:岩田 英樹(金沢大学)

10:30 〜 10:42

[10 保-口-01] 海外に在住する日本人幼児の運動環境に関するパイロットスタディ

ドイツ在住の日本人保護者の認識に着目して

*戸村 貴史1、古田 映布1、佐藤 貴弘2、ラクワール ランディープ2 (1. 筑波大学大学院、2. 筑波大学)

近年、日本企業の海外進出が加速し、短期的な海外赴任をする日本人世帯が増加している。これまで幼児の運動能力の低下や運動頻度の減少が問題視されてきたが、海外に在住する日本人幼児を取り巻く運動環境に焦点をあてた研究は極めて少ない。数少ない先行研究において、海外に住むことで文化や言語などの環境の違いは幼児の運動の機会を制限してしまうことが指摘されている。そこで本研究は、ドイツ・デュッセルドルフ市に在住する日本人幼児の運動環境に着目し、日本人保護者がどのような認識を持っているかについて予備的研究を実施することを目的とした。ドイツ・デュッセルドルフ市に在住する日本人保護者52名を対象とし、質問紙を用いてデータ収集を実施した。調査表は日本人幼児の運動習慣や生活習慣、地域の環境に対する認識などの項目を設定し構成された。その結果、「ドイツでの居住環境はわが子にとって適した運動環境である」という質問項目において、80%以上の日本人保護者が「はい」と回答し、日本人コミュニティエリアの設置が日本人幼児の運動経験に影響を与えていることが示唆された。環境要因として、日本人コミュニティエリアの利便性や安全性が重要視され、運動環境に肯定的な認識が見られた。さらに、「日本語指導のスポーツクラブ」の利用は、海外に在住する日本人幼児にとって貴重な運動環境である。その反面、日本人コミュニティエリアでは「現地人との交流の少なさ」や「運動経験の偏り」が生じていることが明らかになった。これは海外に在住する幼児の運動経験において保護者の意向が大きく影響していると考えられる。したがって今後は、海外に在住する幼児の運動経験について保護者の認識と支援を明らかにし、幼児における海外在住という環境要因が運動経験にどのような影響を及ぼすかを明らかにする必要がある。