日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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体育史/口頭発表④

2021年9月9日(木) 10:30 〜 10:55 会場3 (Zoom)

座長:真田 久(筑波大学)

10:30 〜 10:55

[01 史-口-04] 1964年オリンピック東京大会を契機としたオリンピック精神の普及活動

開催都市東京による取り組みに着目して

*青柳 秀幸1、田原 淳子2 (1. 国士舘大学大学院、2. 国士舘大学)

第18回オリンピック競技大会の開催を契機に、日本では国民を対象にオリンピック精神の普及活動が展開された (真田ら,2007,大林,2015)。その例として、オリンピック国民運動(以下、国民運動)や、それと関連した社会教育及び学校教育の場でのオリンピック教育等が挙げられている。特に、国家主導で展開された国民運動は、世界で最も早く組織的にオリンピック教育が実施された事例として位置付けられている。
一方で、先行研究(田原ら,2017,Aoyagi,2020など)によれば、オリンピック精神の普及に関連した活動は、国による国民運動に先駆けて東京都や民間組織等によって展開されていたことが明らかになっている。しかし、先行研究の検討対象は新聞報道に留まっており、これらの活動の詳細を明らかにするものではない。
そこで本研究では、1964年東京大会に際して東京都オリンピック準備局(以下、準備局)が記録した公文書を主な史料とし、準備局によるオリンピック精神の普及活動を明らかにすることを目的とした。
本研究の結果、準備局は国民運動に先駆けて、都民を対象に大会の受け入れ体制を確立すること等を目的に掲げながらオリンピック精神の普及に取り組んでいたことが明らかになった。その具体的な活動内容は、大会組織委員会や日本体育協会等との共催による催事の開催のほか、オリンピック精神の高揚のための印刷物の作成・配布等、多岐にわたった。さらに、準備局は都議会オリンピック東京大会準備協議会等とも緊密な連携をとっていた。その結果、都知事に対してオリンピック・ムーブメントの精神的、教育的価値を強調するだけでは大会を開催する理由にはならないとする旨の意見書が提出された。そこでは、都民が大会の有無に関わらず住みよい町づくりを求めていることから、大会開催を契機に事業の促進を計ることに大会の一つの意義を見出していたこと等が明らかになった。