日本体育・スポーツ・健康学会第71回大会

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体育経営管理/口頭発表①

2021年9月9日(木) 10:00 〜 11:20 会場7 (Zoom)

座長:関根 正敏(中央大学)

11:00 〜 11:20

[06 経-口-04] スポーツイベントレバレッジ研究の批判的考察

*山北 隆太郎1 (1. オタワ大学)

2000年代前半から始まった「レガシーからレバレッジへ」 (Chalip, 2014, p. 2) というスポーツイベントを取り巻くパラダイムシフトは、スポーツ経営学における新たな研究対象を生み出した。未だ研究者間で相違はあるものの、スポーツイベントレバレッジ (SEL) は「スポーツイベントの生み出す機会を利用して、望ましい成果を得るための戦略的マネジメント」と定義され得る (Beesley & Chalip, 2011; Taks et al, 2013) 。これまで研究者は、様々な文脈においてSELにかかわる要素や取り組みを探索してきた一方 (Chalip, 2017) 、先行研究を整理した上で経営学的な視点からSEL研究の理論的・概念的な課題を議論した研究はほとんど見られない。今日のスポーツイベントの偏在性や影響力、そして成果からプロセスへと関心が移りつつある研究動向を考慮し、本研究では系統的レビューを通してSEL研究を批判的に考察することを目的とした。本研究ではPRISMA声明 (Moher et al.,2009) に基づく系統的レビューにより、SELに関する97編の研究論文を、論文タイプ、研究目的、理論的・概念的枠組を含む各種項目ごとに整理した。批判的考察は、Slack (1996, 2014) の “management of sport” の視点から行った。レビューの結果、SEL固有の概念的枠組を扱う研究が普及する一方、一般経営理論を援用する研究が不足していることが示された。筆者は前者の研究について、SELの文脈的要因 (e.g., イベントタイプ、SEL主導者) 及び成果タイプの多様性 (e.g., 組織能力の向上、組織目的の追求) を理由に、その理論的・実践的貢献に対する懸念を提示する。また後者の研究については、具体的な経営理論を例示しながら、SEL固有の概念的枠組を扱う研究との融合も含め今後の展望を議論する。