日本体育・スポーツ・健康学会第72回大会

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学校保健体育研究部会 » 【課題C】 体育・スポーツ健康科学は学校保健体育の進展にいかに貢献できるか

学校保健体育研究部会【課題C】口頭発表②

2022年9月1日(木) 14:00 〜 15:03 第10会場 (2号館4階45教室)

座長:春日 晃章(岐阜大学)

14:16 〜 14:31

[学校保健体育-C-06] 運動の苦手な子供における効果的な指導方法について(ア)

メタ分析を用いた検討

*堀田 愛1、高橋 達己2、齊藤 まゆみ3 (1. 筑波大学大学院体育学学位プログラム、2. 田園調布学園大学、3. 筑波大学体育系)

本研究の目的は、運動有能感の向上に効果的な指導方法を明らかにするとともに、特に運動の苦手な子供に焦点を当てて効果の大きい指導方法を検討することとした。そのためにメタ分析を用いて、運動有能感を測定した研究を統合し、効果量を算出して分析した。その結果、運動苦手群を設定した研究にフォーカスしたところ、本研究でレビューした研究全体と比較して、運動有能感の向上において効果量が高いことが明らかとなり、下位因子の中では特に「受容感」の効果量が最も高いことが示された。そこで運動苦手群の「受容感」において指導方法別にみた効果量を分析したところ、「段階的指導」と「学習者同士の関わり」による効果量が比較的大きいことが明らかとなった。これらの結果をもとに、運動が苦手な子供の効果的な指導方法について考察したところ、「段階的指導」は、通常の運動場面では成功することが難しい運動苦手群にとって、自分に適した課題や環境が段階的に設けられていたことで、自ら運動を行おうという動機付けにつながったのではないかと考えられた。また、「学習者同士の関わり」は、学習者同士が共有できる客観的情報の提供やグループでの活動の場を設けることにより、通常の運動場面では注目されることの少ない運動苦手群が他の学習者から認められていると実感できていたのではないかと考えられた。これらの考察から、体育授業においては、運動の苦手な子供の特性のみに焦点を当てて問題解決しようとするのではなく、その子供を含む集団に働きかけ、受容的な集団を育成することが重要であると考えられた。その実践方法のひとつとして、個人と環境、課題の3要素の関連性を重視したアダプテッドのエコロジカルモデルの視点が必要ではないかと考えるに至った。