日本体育・スポーツ・健康学会第72回大会

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競技スポーツ研究部会 » 【課題B】 競技スポーツにおけるコーチ養成をいかに効果的に行うか

競技スポーツ研究部会【課題B】口頭発表①

2022年9月1日(木) 09:00 〜 10:19 第3会場 (3号館4階402教室)

座長:田井 健太郎(群馬大学)

09:00 〜 09:15

[競技スポーツ-B-01] 全国トップレベルの競技性をもつ高等学校運動部指導者に求められる概念(方)

所属する生徒へのフォーカスグループインタビューを基に

*清野 隼1,2、田丸 尚稔3,4、高橋 義雄1,2 (1. 筑波大学 体育系、2. 筑波大学 スマートウエルネスシティ政策開発研究センター、3. 株式会社アシックス、4. 筑波大学 スポーツウエルネス学学位プログラム)

本研究は、高等学校運動部の中でも、勝利や個人の潜在能力の最大限発揮と卓越性の獲得を求めて活動する部活動を、「競技部活動」と定義し、国内トップレベルの競技部活動を行う生徒が指導者に求める概念を、事例的に明らかにすることを目的とした。 対象者は、関東地方の私立A高等学校硬式野球部(以下、野球部)、ならびに同校駅伝部に所属する生徒とし、選定条件の結果、野球部が8名、駅伝部は6名となった。調査は、フォーカスグループインタビューを採用し、生徒同士の相互作用を引き出すことに留意してインタビューガイドを基に実施した。調査日は、対面での実施許可が学校から得られた日を調整し、野球部が2021年11月28日、駅伝部が2022年1月26日であった。得られた質的データは、KJ法を用いて分析した。本研究は、株式会社アシックス臨床研究倫理審査の承認を経て実施した(第21-0206号)。分析の結果、野球部においては85の逐語から39のコードが抽出され、28の下位カテゴリ、8の中位カテゴリ、3の上位カテゴリが生成された。また、駅伝部においては74の逐語から27のコードが抽出され、19の下位カテゴリ、5の中位カテゴリ、2の上位カテゴリが生成された。 結論として、家族のような優しさを備え、選手と対等な存在でありながら厳しさを伴い、心理的安全性を共存できる指導者が求められていることが明らかとなった。また、全国トップレベルの競技結果と指導経験に裏付けられ、時代の変化に伴い進化する高度な指導力と、組織マネジメント力を兼ね備えていることも、求められる概念であることが示された。これらは、指導者一人で実現するには限界があり、複数のエキスパートが関わる運動部指導のシステムに関する有効性の検討が必要と考えられる。