日本体育・スポーツ・健康学会第72回大会

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体育哲学/口頭発表③

2022年9月2日(金) 15:44 〜 16:14 第11会場 (2号館4階46教室)

座長:荒牧 亜衣(武蔵大学)

15:44 〜 16:14

[00哲-口-03] 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会開催にみる国際オリンピック委員会の権力行使に対する批判的検討

東京2020大会開催とオリンピズム推進のかかわりから

*唐澤 あゆみ1 (1. 日本体育大学大学院)

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京2020大会)は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言下で開催された。東京2020大会開催を目前に控えた時期においては、世論は「なぜ、いまオリンピックなのか?」と開催に疑問を投げ続けた。また、学者や作家、ジャーナリストら14人が呼びかけ人となって始まった東京2020大会の中止を求めるオンライン署名への賛同は、開会式の直前に約14万筆に達した。
 こうした中で開催された東京2020大会には、国際オリンピック委員会(以下、IOC)と開催都市や開催国などオリンピック開催に関わる諸アクターとの力関係の不釣合いを議論の対象に、次のような批判がある。石坂(2021)は、そもそもIOCと開催都市・東京都の間で締結した開催都市契約にはIOCのみに大会中止の権限が付与されていることに触れ、IOCと開催都市との間に圧倒的な不均衡な関係が存在していることを指摘している。吉見(2021)は、新型コロナウイルス感染拡大のなかでの東京2020大会は、IOCが市民よりもスポンサーやメディアの都合を優先する構図を露呈させたと述べている。
 東京2020大会開催と、スポーツを通じた平和な社会の実現を目指すオリンピズムの推進との二つの側面から、IOCの中で自己矛盾が生じていると考えられる。くわえて、IOCと開催都市・東京都との力関係の不均衡さが露呈したことは看過しがたい。だが、オリンピズムの推進の側面からIOCの権力について批判した論文は少ない。
 よって、本研究の目的は、新型コロナウイルス感染拡大のなかでの東京2020大会開催に対するIOCの態度を検討し、IOCの権力行使について批判的に考察することにある。IOCの本来のミッションであるオリンピズム推進の視点に依拠することで、過度な商業主義や政治とオリンピックの繋がりを批判されてきたIOCの権力構造の一端が示されるであろう。