日本体育・スポーツ・健康学会第72回大会

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体育心理学/口頭発表②

2022年9月2日(金) 16:03 〜 17:05 第1会場 (3号館3階301教室)

座長:田中 輝海(駿河台大学)

16:45 〜 17:05

[03心-口-06] 日本人アスリート用リカバリー方略尺度およびリカバリー反応尺度作成の試み

アスリートのリカバリーに関する概念整理

*森川 澪1、門岡 晋2、小笠原 佑衣6、柄木田 健太5、雨宮 怜4、菅生 貴之3 (1. 青森県スポーツ科学センター、2. 金沢星稜大学、3. 大阪体育大学、4. 筑波大学、5. 国立スポーツ科学センター、6. 大阪体育大学大学院)

リカバリーは、「アスリートが以前のパフォーマンスにもどる、または超える能力を得ることにつながるプロセス全体」(Hausswirth & Mujika, 2013)と定義されている。既存尺度においては、リカバリーと考えられる方法(以下、リカバリー方略)とリカバリー方略を行った結果生じる反応(以下、リカバリー反応)とが混在しており、また日本人の文化的背景に配慮されていなかった。そこで本研究では、リカバリーの各側面に着目し2つの尺度の作成を行うこととした。 予備調査では、リカバリー方略とリカバリー反応それぞれについて自由記述にて回答を求め、KJ法を用いて概念整理を行った。また、その結果をもとにリカバリー方略尺度38項目、リカバリー反応尺度51項目の原案を作成した。 本調査では、リカバリー方略尺度(指示項目3項目含む)とリカバリー反応尺度(指示項目4項目含む)を用いて、日本人アスリートを対象に調査を実施した。リカバリー方略尺度は探索的因子分析の結果、8因子(F1:ソーシャルサポートの希求、F2:生活の管理、F3:気分転換、F4:競技への熟考、F5:欲求の充足、F6:ソートストッピング、F7:1人の時間、F8:感情の解放)35項目が抽出された。さらに因子の妥当性を確認するために各因子の因子負荷量が高い順に3項目ずつを選定し確認的因子分析を行った結果、適合度指標はGFI=0.923、AGFI=0.893、CFI=0.914、RMSEA=0.052、AIC=512.676となり、検証したモデルの適合度は十分なものであった。 リカバリー反応尺度は探索的因子分析の結果、5因子(F1:ポジティブな心理的反応、F2:心理的距離、F3:パフォーマンス発揮、F4:睡眠の質、F5:自己方向付け)34項目が抽出された。また、各因子の因子負荷量が高い順に4項目ずつを選定し確認的因子分析を行った結果、適合度指標はGFI=0.882、AGFI=0.845、CFI=0.908、RMSEA=0.076、AIC=606.402を示し、総合的にモデルは適合的であると判断した。今後は、尺度を簡易的かつ継続的に使用可能なものにするための検証を行っていくことが望まれる。