17:06 〜 17:26
[03心-口-07] 体罰を経験したアスリートの語りの質的検討
指導に対し「無の感じ」と語った大学生アスリートとの振り返り
本研究の関心事は、アスリートが体罰の経験をどのように語り、意味づけていくのかにある。2012年に高校男子バスケ部のキャプテンが指導者の度重なる暴力的指導によって自死した事件から、今年で10年になる。これまで、体罰根絶へ向けてその発生要因を明らかにすべく、指導者とアスリートの関係性(松田、2015)や運動部の空間特性(村本・松尾、2016)、体罰を助長する周囲の状況要因(上野、2021)等、様々な視点から検討がなされてきた。また、アスリートが指導者の体罰を受容する(若しくは否定できない)ことによって、体罰への正当化が生じ、再生産が繰り返されることが予測されている(阿江、2022)。このことから、体罰発生の背景には複雑な要素が存在し、アスリートに影響を及ぼしていると考えられる。今後体罰を経験したアスリートの様相を捉えていく上で、アスリートが他者との間で体罰経験をどのように振り返り、意味づけているのかという語りのプロセスを丁寧に分析する必要がある(ナラティヴ・アプローチ)。
そこで本研究は、『アスリートは体罰の経験をどのように意味づけるのか』というリサーチクエスチョンを設定し、質的にアプローチすることで、語りのプロセスの視覚化を行った。過去に指導者からの体罰を受けた経験のある大学生アスリート1名(Informant:以下、Inf. )を対象に、1対1形式の半構造化面接(約1時間)を実施した。面接内容は、事前に承諾を得て会話をICレコーダーに録音し、その後逐語化を行い、発話データとした。発話データは修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを参考に分析し、概念を導き出した。面接内でInf. は指導者の言動に否定的な意見を述べたが、一方で、その時の気分や感情については「無の感じ」と詳細を語ることが難しい様子であった。アスリートの「感じ」の語れなさに対し、研究者との関わりや語りの文脈を重視しながら検討し、その意味について考察する。
そこで本研究は、『アスリートは体罰の経験をどのように意味づけるのか』というリサーチクエスチョンを設定し、質的にアプローチすることで、語りのプロセスの視覚化を行った。過去に指導者からの体罰を受けた経験のある大学生アスリート1名(Informant:以下、Inf. )を対象に、1対1形式の半構造化面接(約1時間)を実施した。面接内容は、事前に承諾を得て会話をICレコーダーに録音し、その後逐語化を行い、発話データとした。発話データは修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを参考に分析し、概念を導き出した。面接内でInf. は指導者の言動に否定的な意見を述べたが、一方で、その時の気分や感情については「無の感じ」と詳細を語ることが難しい様子であった。アスリートの「感じ」の語れなさに対し、研究者との関わりや語りの文脈を重視しながら検討し、その意味について考察する。