[03心-ポ-15] 審判インストラクターを対象とした心理的スキルを改善する方略の検討
近年、スポーツ審判員における心理的側面の重要性が強調されるようになってきた。審判員の試合時における過度な緊張や不安などのストレス要因は、ジャッジパフォーマンスにマイナスに作用することも考えられる。例えば、村上ほか(2017)は、自己コントロール、表出力、自信、コミュニケーションなどの心理的スキルが審判員にとって重要であり、心理面の強化の必要性を指摘している。一方で、審判員がメンタルトレーニングと意図していなくても、心理的スキルを改善するために何らかの方略を用いていることも考えられる。そこで、本研究では、審判インストラクターを対象として、普段用いている心理的スキルを高める方略について探索的に検討した。対象者はチーム競技の審判インストラクター9名(平均年齢50.8歳;審判経験年数25.3年)であった。調査は、審判員用心理的スキル尺度の下位因子(自己コントロール、表出力、意欲、自信、コミュニケーション、集中力)について、普段活用している高め方や改善方法、工夫について自由記述で行った。得られた内容について整理・集約した結果、自己コントロールに関しては、イメージや音楽の活用、肯定的なセルフトークなどが報告された。また、表出力については、鏡を見たり映像を確認することなどが報告され、意欲を高める方略としては、成功体験やイメージ、周囲からの声かけなどが報告された。一方、自信に関しては、過去の経験と努力、肯定的なセルフトーク、競技規則の理解が報告され、コミュニケーションについては、非言語的コミュニケーションの活用や挨拶などが報告された。最後に、集中力を高める方略については、周囲の観察や時間を区切るなどの回答が得られた。今回の調査で得られた知見は、審判員に対するメンタルトレーニング研究の基礎資料になると考えられる。